じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 モジャモジャになった日本翁草とヒラドツツジの花。モジャモジャになる前の日本翁草の写真は4月21日の楽天版にあり。写真が示すように、オキナグサの開花期間は短い。「誰がいつ訪れても花が咲いている」ことが求められる公共花壇には向いていないのかもしれない。「毎日訪れて季節感を味わう」という散歩者には喜ばれるとは思うが。


2014年4月29日(火)

【思ったこと】
140429(火)長谷川版「行動分析学入門」第4回(4)オペラント行動とオペラント条件づけ(4)行動随伴性の基本(2)好子、嫌子、強化、弱化

 前回、オペラント行動の自発頻度が結果によって増減する事例として4通りを示しました。この4通りは基本随伴性と呼ばれます。
  • 行動の結果によって以後の自発頻度が増える場合
    • a.【   】→釣り糸をたれる→【獲物の魚】
    • b.【毒蛇】→棒で音をたてる→【   】
  • 行動の結果によって以後の自発頻度が減る場合
    • c.【   】→タヌキを素手で捕まえようとする→【噛まれる】
    • d.【ウサギ】→足音を立てる→【   】
なお、「以後の自発頻度が増減」するといっても、無限に増えたり、マイナスになることはありません。「増える」は、「右肩上がりに増える」場合のほか、元の状態(ベースライン)より増えた状態を保つ場合を含み、また「減る」には、「右肩下がりに減る」場合のほか、元の状態(ベースライン)より減った状態を保つ場合を含むというようにご理解ください。

 上記の4例は、行動が増える場合(高頻度を保つ場合)と、行動が減る場合(低頻度に押さえられている状態)に二分されます。このうち
  • 前者は、行動が強められているという意味で「強化」
  • 後者は、行動が弱められているという意味で「弱化」
と呼ばれます。また、上記4通りのうち、a.とc.に相当する事例において、
  • 行動の直後に出現することでその行動を強化するような刺激や出来事のことを「好子(コウシ)」
  • 行動の直後に出現することでその行動を弱化するような刺激や出来事のことを「嫌子(ケンシ)」
と呼びます。上記の例で言えば、「獲物の魚」は「好子」、「タヌキに噛まれる(痛みや出血)」は「嫌子」ということになります。

 では、残りのb.とd.はどうかと言いますと、b.の「毒蛇」は「タヌキに噛まれる(痛みや出血)」と同じように嫌子、またd.の「ウサギ」は「獲物の魚」と同じように好子としての機能することが分かります。つまり、
  • 毒蛇に手を触れると噛まれた。以後、手を触れないようになった。
  • 罠を仕掛けたらウサギがかかった。以後、罠をしかける行動が増えた。
というように、b.とd.に出てきた「毒蛇」や「ウサギ」は、それぞれc.とa.の例としても使うことができます。同様に、a.とc.に出てきた「獲物の魚」と「タヌキに噛まれる(痛みや出血)」も
  • 獲物の魚をバケツに入れたままにしておいたらトンビに盗まれた。以後、バケツには放置しないようになった。
  • 止血・湿布をしたら、タヌキに噛まれた傷の痛みが無くなった。以後、ケガをした時は、止血・湿布をするようになった。
というように、それぞれd.とb.の例として使うことができます。

 より一般化して書き直しますと、
  • 行動の直後に「出現」したかか「消失」したか
  • 行動を増やす働きをするか、減らす働きをするか
という2×2で分類した場合、
  • 行動の直後にAが出現すると、以後、その行動は増える
  • 行動の直後にBが消失すると、以後、その行動は増える
  • 行動の直後にCが出現すると、以後、その行動は減る
  • 行動の直後にDが消失すると、以後、その行動は減る
という4通りににはなりますが、じつは、AとDはいずれも好子であって、AとDを区別する必要はなく、またBとCも嫌子として、区別する必要がないということが経験的に分かります。わかりやすく言えば、
  • 好子は、それを手に入れる行動を増やし、それを失う行動を減らす
  • 嫌子は、それを取り除く行動を増やし、それに遭遇する行動を減らす
ということになります。

 なお、「好子」、「嫌子」は、入門書によってはそれぞれ「正の強化子」、「負の強化子(罰子)」と呼ばれることがあります。また、「強化」と「弱化」のうちの「弱化」は「罰」と呼ばれることもありますが、最近では、行動分析学会の研究発表やシンポなどでも「好子」、「嫌子」、「弱化」は特に抵抗なく使われていますので、ここでもそれに従います。【「好子」、「嫌子」、「弱化」は、杉山ほか(1998)で本格的に提唱された呼称であり、行動分析学者の中には、従来通りの「正の強化子」、「負の強化子」、「罰」といった呼称をそのまま使い続けている人もいます。】

 次回に続く。