じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 農学部農場の一角に群生するナガミヒナゲシ。マツバウンランと同じ場所にあり。

 ナガミヒナゲシは、開花直前の状態が趣がある。過去写真が以下にあり。


2014年4月24日(木)

【思ったこと】
140424(木)長谷川版「行動分析学入門」第3回(2)環境への適応方略としての行動(3)

 植物が、主として、葉っぱや茎や根の形を変えて環境変化に適応していくのに対して、動物は、その名の通り、行動することで環境変化に適応します。そのパターンは大きく分けて次の2通りです。
  1. 環境変化をあるがままに受け止め、それに適応できるように身体を調整する行動。
  2. みずから環境に働きかけ、環境を変化させたり、変化を食い止めたりするような行動。
 これら2つは次章で述べる、レスポンデント行動とオペラント行動の区別にほぼ対応しています。

 このうち1.は、例えば、
  • 暑い時には、汗を出す。
  • 寒い時に、鳥肌がたつ。
  • 有害な物質を吸い込んだ時に、くしゃみや咳をする。
  • まぶしい光が当たった時には瞳孔が収縮する。
  • 食物が口に入った時に唾液を分泌する。
といった行動が挙げられます。行動といっても、主として体の調整のための行動ですから、動きとして観察される行動はあまり多くありません。それゆえ、「行動」ではなく、「反応」とか「反射」と呼ばれることもあります。

 いっぽう、脊椎動物などでは、みずから行動して自分の都合のよいように環境を作りかえたり、餌をとったり、縄張りを作ったり、といった行動が見られるようになります。その適応方略の基本は「成果主義」、「効率性」に通じるところがあります。つまり、成果が得られるような行動を増やす一方、やってもムダな行動は中止していくという方略です。後に述べる「強化」、「弱化」、「消去」といった原理は、まさにこれに一致します。

 もっとも、「適応方略」だけで行動を説明することは必ずしも正しいとは言えません。もし人間の行動がすべて適応的であるとするなら、甘い物や脂肪分の取り過ぎといった生活習慣病につながる行動はなぜ止めにくいのか、暴力や殺人はなぜ無くならないのか、といった問題現象を説明することができません。

 要するに、私たちに備わっている適応方略は、原始時代の過酷な環境の中で生き延びるために淘汰されたものであり、モノがあふれる現代社会には必ずしも通用しなくなってしまったのです。例えば、甘い物や脂肪分は、食糧の獲得確保が難しかった原始時代には貴重なエネルギー源になっていました。しかし、今の社会では、比較的容易に入手できるため、むしろ、命を縮める原因になってしまっているという次第です。

 ということで、適応的意義は、「そもそも、人間や動物はなぜ行動するのでしょうか?」という根本原因を考える時には有用かもしれませんが、現代人の諸行動の原因を説明する理論としては、文字通り「時代遅れ」と言わざるを得ません。

 不定期ながら次回に続く。