じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 大学構内に作られた雪だるまは翌日以降にほぼ崩壊&融解。写真下は、その残骸の上に輝く金星。



2014年2月12日(水)

【思ったこと】
140212(水)コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン(1)日本「再創造」−活力ある長寿社会へのイノベーション−(1)

 表記のタイトルの第3回領域シンポジウムが2月11日午後に、日経ホールで開催された。

 このテーマに関連したシンポとしては、サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)公開シンポジウムに参加したことがあり、3年ぶりということになる。もともとはサステイナビリティ学への関心から参加したものであったが、小宮山先生の主導のもと、ここ数年のうちに、高齢社会のあり方を中心に据えて「省エネ・新エネ」と一次産業循環型を組み込んだプラチナ社会構想へと大きく発展した模様である。

 今回の小宮山先生の基調講演「日本「再創造」−活力ある長寿社会へのイノベーション−」の冒頭でも言及されたように、高齢社会(長寿社会)というのは人類の成果であって、決してネガティブな問題としてとらえるべきではない。世界全体での平均寿命は1900年には31歳、2011年には70歳であった【関連記事がこちらにあり】。この伸びは、医療技術の進歩ということもあるが、それ以上に、世界全体の生産力が向上し、かつては一握りの特権階級だけしか長生きできなかった時代から、大部分の地域(もちろん、アフリカなどの一部では未だに飢餓・貧困が常態化している)では、衣食住の基本が満たされるようになったためとも言える。しかしそうした中で、新たな問題が生じてきた。それを解決する先進的な取り組みこそが「プラチナ社会構想」であるというようなお話であり、リンク先の記事をほぼ踏襲したものであった。

 小宮山先生を中心とした活動がスゴイと思うのは、ボトムアップ的な市民運動ではなく、政界・財界・自治体のトップに直接働きかける形でプロジェクトを進めようとしている点である。ネガティブな事象をいくら訴えても一部の人たちしか動かないのが人間のサガというものであるが、こうすればこれだけQOLが高められる、それを維持できるという具体的プランを示すことができ、ビジネスモデルができあがれば、現体制の内部変革という形で目的を実現することができる。それがいいか悪いかという議論は別として、とにかく、反体制的になりがちな平和運動や環境保護運動とは明らかに異なっている。

 もっとも、今回の基調講演の中ではあまり触れられていないこともあった。それは、いまの世界を動かしている巨大な金融市場をどうするのかということである。現在、世界の圧倒的多数の地域では、この仕組みに基づいた経済活動が国を動かしている。そして、その格差が、先進国の一部の人たちの贅沢な暮らしをもたらし、新興国の人たちを働かせている。果たして、新興国の生産力が向上するというだけでこの格差は無くなるのだろうか。モーサテで解説されているマネーの動きを見ると、最近の新興国の通貨・債券の不安定さ、もっぱら米国の金利と連動しているが、先進国に依存しないような経済発展をとげることが果たして可能なのか、よく分からない。

 この日記でも何度か書いているが、個人レベルで、他人を自分のために働かせる(あるいは、働いてもらう)方法は、大ざっぱに言って以下の4通りである。
  1. 暴力的手段によって無理やり働かせる(奴隷制度、捕虜、独裁国家など)
  2. 働いてもらうような制度をつくる(社会保障一般)
  3. 資源や機会を専有し、それを分け与える代わりに働いてもらう(投資、マンション経営など)
  4. 他者に役立つ人間(悪く言えば、利用価値があるという意味)になることで、その見返りに自分のためにも働いてもらう。
しかし、2.から4.の仕組みは、いずれも貧富の差、さらには格差がないと成り立たない。国民全員に1億円を支給しても、誰一人贅沢な暮らしができないのと同様である。でもって、「省エネ・新エネ」と一次産業循環型は国内だけで見れば安定した社会が実現するだろうが、果たして、他国からの脅威に耐えうるのか、それでもなお世界から見捨てられることはないのかが若干気になるところではあった。

次回に続く。