じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山大学構内(写真左。8月23日早朝に撮影)と、トルクメニスタンのヤンギ・カラに出現した足長じいさん。

 ちなみに、8月23日朝の岡山の最低気温は27.2℃であったが、ヤンギ・カラのほうは20℃前後まで下がっていた。また岡山の8月22日の最高気温は37.2℃。ヤンギカラのほうもほぼ同じくらいの暑さだったが、乾燥しているため、じっとしていると汗がにじみ出てくるような蒸し暑さはなかった。

 なお、ヤンギ・カラの写真の絶壁の上には、我々のテントとランドクルーザーが写っている。また、絶壁上部を構成する地層は中生代のものと見られ、アンモナイトの化石片が散見された。


2013年08月22日(木)

【思ったこと】
130822(木)高齢者における選択のパラドックス〜「選択の技術」は高齢者にも通用するか?(2)シュワルツの提言

 8月20日の続き。

 この連載のタイトルに含まれる「選択のパラドックス」とは、心理学者バリー・シュワルツ(BarrySchwartz)の著書、

Schwartz,B.(2004).The paradox of choice: Why more is less. New York: Harper Perennial.【ペーパーバック版】

に因むものである。この著書の内容を簡略に紹介した、「選択のパラドックス(The paradox of choice)」というタイトルのTEDプレゼンテーション中で、彼は
The more choice people have, the more freedom they have, and the more freedom they have, the more welfare they have.
選択肢が多ければ多いほど、より多くの自由が得られる。より自由であればあるほど、より幸せになれる。
というドグマが、誰も疑わないほどに西洋の産業社会に浸透していると指摘した上で、選択肢があまりにも多いとむしろ混乱を招くこと、自己責任が伴う選択はしばしば後悔の原因となることなどを指摘した。具体的には、以下のような混乱が挙げられている。
  • 選択に迷うことによる弊害
  • 選択肢を決定した後の後悔
  • 自己責任に苛まれる
などなど。

これらの「パラドックス」を克服するための技法として、Schwartz(2004)は、全体の章構成に対応させる形で、最終章で以下のように提唱している。以下、各項目の表題とそれに対する意訳を挙げておく。
  • (1)Choose When to Choose
    あふれる選択機会のうち、重要でない選択機会は無視し、重要な機会のみを選ぶ。
  • (2)Be a Chooser, Not a Picker
    能動的な選択を心がける
  • (3)Satisfice More and Maximize Less
    最大化(最良ものを求め続ける)にこだわらず、「まずます(「これでいいのだ!」)」で満足する
  • (4)Think About the Opportunity Costs of Opportunity Costs
    選択肢を比較することは大切だが、過剰な比較や(選んだ選択肢の)デメリットについてこだわりすぎない
  • (5)Make Your Decisions Nonreversible
    いったん選んだら、取り消さない。キャンセルの可能性を断つ。
  • (6)Practice an "Attitude at Gratitude"
    選んだ選択肢の良い面を評価し感謝する
  • (7)Regret Less
    選んだことや選ばなかったことについての後悔をつつしむ
  • (8)Anticipate Adaptations
    いかに素晴らしいと思って選んだものであっても、時間経過や反復利用によって評価が低下(順応)していくことを覚悟する
  • (9)Control Expectations
    多くの場合、選択は、その選択肢への期待の度合いによって評価される。過剰な期待や、期待の増幅(最大化)はつつしむ
  • (10)Curtall Social Comparison
    他者との比較にこだわらない
  • (11)Learn to Love Constraints
    可能性に限界があることが喜びになることを知る
 なお、上掲の11項目は一般読者向けに発せられたものであり、、心理学の諸研究の成果に基づくものではあるが、シュワルツ自身の個人経験に依る部分も少なくない。また、上掲いずれかの項目を実践した場合としなかった場合について、特段の実験的証拠が得られているわけでもない点に留意する必要がある。

 さて、これら11項目の中には、高齢者にピッタリ当てはまるものと、あまり該当しそうもないものがある。最終的には、調査研究の中で明らかにするべきであるが、とりあえずいくつかの仮説を立ててみると、
  • (1)Choose When to Choose
    →そもそも、高齢者に、あふれる選択肢があるかどうかは不明
  • (2)Be a Chooser, Not a Picker
    →施設入居者の場合などは、与えられた選択肢から「選ばされている」可能性がある
  • (3)Satisfice More and Maximize Less
    →体調や寿命を意識するようになれば、望んでも追求者(Maximizer)にはなれない。そうなると、「まずます(「これでいいのだ!」)」で満足することに慣れてくる可能性がある。
  • (4)Think About the Opportunity Costs of Opportunity Costs
    →余命を意識するようになれば、過剰な比較は困難になるかもしれない。しかし、年を取っても相変わらず、他者と比較ばかりして愚痴をこぼす人もいある。
  • (5)Make Your Decisions Nonreversible
    →高齢になっても、取り消しや選び直しにこだわる人はいる。
  • (6)Practice an "Attitude at Gratitude"
    →宗教を信じている人などでは、教義に基づき感謝を強調する人がいる。
  • (7)Regret Less
    →高齢者でも後悔する人は少なく無い。反面、後悔はムダだと悟る人もいる。
  • (8)Anticipate Adaptations
    →高齢になると、こうした「順応」があることは経験的にわかってくるのでは?
  • (9)Control Expectations
    →高齢になると、自分の人生でできることととできないことを悟るようになり、過剰な期待や期待の増幅(最大化)は自然につつしむようになるのでは? もっとも、ごく一部には、かなり歳を取っても新しいことにチャレンジしようと頑張る人がいる。
  • (10)Curtall Social Comparison
    →比較する他者が先に亡くなったりすると、自然に比較の頻度も減少するのでは?
  • (11)Learn to Love Constraints
    →これはまさに「老い」の受容であり、離脱理論的人生とも言える


次回に続く。