じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 8月4日(日)の岡山は、午後になってから次々と雷雲が押し寄せ、14時台には4.5ミリの降水量を記録した。これで、7月29日以降、7日連続の降水となった(但し、気象庁の記録上は、7月31日と8月3日の雨量はゼロとなっている)。


2013年08月4日(日)

【思ったこと】
130804(日)日本行動分析学会第31回大会(10)「罰無き社会」を再考する (1)

 今回は、7月28日(日)午後に行われた、 自主企画シンポジウムII:「罰無き社会」を再考する についてメモと感想を述べさせていただく。

 このシンポは、
  • 企画・司会 島宗理
  • 話題提供
    • 杉山尚子
    • 奥田健次
    • 山本史子
という構成になっていたが【敬称略】、実は、私の今年度前期の教養教育「行動分析学入門では」
  • 教科書:奥田健次『メリットの法則――行動分析学・実践編』(集英社新書、2012年、777円)ISBN 978-4-08- 720664-7
  • 参考書:杉山尚子『行動分析学入門〜ヒトの行動の思いがけない理由』(集英社新書、2005年、660円。)
  • 参考書:島宗理『人はなぜ約束の時間に遅れるのか素朴な疑問から考える「行動の原因」』(光文社新書、2010年、798円。)
というように、このうちのお三方の御著書を教科書または参考図書に指定してある。そのこともあって、馴染み深い表現や用語が次々と登場し、分かりやすいシンポであった。なお、もうお一人の山本史子氏のご所属は、ヤマザキ動物専門学院/帝京科学大学であり、罰的方法に頼らずに犬などを躾ける専門家として知られている。

 シンポではまず、島宗氏が、バングラデッシュの某縫製工場で、「逃げたら給料払わない」という劣悪な罰的統制が行われている事例(7月26日の朝日新聞記事。こちらに関連記事あり)、大阪の市立高校のバスケットボール部の生徒が体罰が原因とみられる自殺をした事例、また、日本国内で依然として、体罰を肯定的にとらえる風潮があることを示す調査結果などが紹介された。ちなみに、全国の中学校教員1000人を対象に行った調査によれば、過去1年間に体罰をしたと答えた教員は62%、「それは正しいことだった」と答えた比率は77%にのぼるという。なお、学校教育法第十一条では、
第十一条  校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
と定められているが、体罰に該当するかどうかについての参考事例は複雑多岐にわたっているようだ。
 いっぽう、家庭内における体罰については、民法第822条において
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
となっていて懲戒権が認められているが、「懲戒は子の利益(820条)のため、ひいいては教育の目的を達成するためのものであるから、その目的のために必要な範囲内でのみ認められる。この範囲を逸脱して過度の懲戒を加えたときは、懲戒権の濫用となり、場合によっては、傷害罪、暴行罪、逮捕監禁罪などの犯罪を構成することもありえる。」とされている。但し、体罰についての具体的な禁止規定は無く、それが、傷害や暴行にあたるのかどうかはケースバイケースで判断されるようである。このほか、人気マンガ『巨人の星』では、星一徹が星飛雄馬に繰り返し体罰を与えているような印象があるが、実際に、一徹が飛雄馬を叩いたり、ちゃぶ台をひっくり返したりするシーンは、数回しか出てこないという雑学ネタ、あるいは根性モノのマンガ・アニメや、体罰肯定論の著書などが紹介された。

 なお、アメリカ心理学会や国際行動分析学会では、体罰使用に否定的な決議や声明が何度か出されているが、日本の心理学関連学会や教育学関連学会では未だにそのような行動はとられていないとのことであった。

次回に続く。