じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 一般教育棟構内(津島東キャンパス)・南東端のグラウンドの整備状況と、工事開始前の昨年7月との比較。運動施設としての利用価値が高まったのは良いことだと思うが、植物は大幅に減ってしまった。もっとも、ここに繁殖していたハルシャギクは特定外来植物なので、もともと駆除の対象にはなっていた。


2013年04月12日(金)

【思ったこと】
130412(金)早期英語教育より、日常生活での英語環境の整備を

 4月11日のモーサテで、「過熱する幼児英語教育ビジネス」という話題を取り上げていた。TOEFLの大学受験導入議論など、安倍政権の目指す教育改革で英語教育が大きな柱となっているの追い風を受け、活況を呈している幼児からの英語教育の現場を取り上げていた。要約すると以下のような内容であった(←長谷川のメモによるため一部不確か。オンデマンド視聴はこちら。)
  • ある英語教材を展開する会社では、利用者の教材購入平均額が約45万円で、この2年で売り上げが1.5倍となった。
  • 横浜市の私立英語塾では3歳児が元素名やiPS細胞を英語で勉強。これは、英語の勉強ではなく、英語で勉強という趣旨らしい。
  • 4月8日には「日本人向けのインターナショナルスクール」が開校。モデル校として研究し、カリキュラムや教師育成ノウハウをパッケージ化する計画で、日本国内だけでなくアジアの幼稚園に販売する狙い。
  • フィリピンへの親子留学の人気が高まり、留学仲介業者は、現地に学校設立し、拡大を図っている。
  • この日の番組ゲストの広木隆氏は「英語を学ぶのは素晴らしいが、その分、何かをギブアップすることになる」というようにコメントされた。
 最後の広木氏のコメントには私も同感である。人間はみな1日24時間、1年365.2422日という限られた時間を生きており、とりわけ、幼児においては、成長のための時間はきわめて貴重である。英語教育のために時間を使えば、その分、何かが失われることになる。それを天秤にかけた時に、果たして、英語教育に特別の時間を割くメリットがあるかどうかは疑問である。

 ちなみに、私自身は、25年ほど前に、 といった論文を発表したことがあり、早期幼児教育そのものには反対していない。但し、現在のところ、日本では、幼児が英語にふれる機会は、英語教室や教材の中だけに留まってしまい、日常生活から切り離されてしまっている。テレビのスイッチを入れても、二カ国語放送を英語で聞かない限りは英語にふれることはないし、街中を歩いていても、看板の文字はみな日本語。マンガも日本語。挨拶も日本語である。

 いっぽう、漢字熟語のほうは、日常世界で当たり前に使われており、むしろ、日常生活で使わない「ひらがな表記」から先に教えること自体が不自然になっている。こちらの論文の考察部分にも書いたが、
...筆者は,今回被験児となった長男を連れて,しばしば団地の周辺を散歩するが,道路沿いには,「電話」,「工事中」,「止まれ」,「駐車場」,「長崎」など,漢字で書かれたさまざまな表示がある.こうした表示を自分で発見したときの子供の喜びは,漢字を知っていて初めて得られるものである.また,高速道路のサービスエリアで休憩をしていた時,駐車場のほうを見ていた子供が「あのトラック,牛乳を運んでいるよ」とうれしそうに言ったことがある.見ると,トラックの側面には大きく「○○牛乳」と書かれてあった.ひらがなで「ぎゅうにゅう」と書かれているのは絵本という隔離された世界の中だけである.漢字を知らなければ,日常生活場面の中では,牛乳を運ぶトラックも宅配便のトラックも区別できない.つまり,漢字の習得はより豊かな環境世界を与える効果があると言えよう.
という効果がある点で、幼児英語教育とは大きく異なっている。

 もし、国の方針として英語教育を重視するのであれば、まずは、ドラえもんやサザエさんなど、子どもたちが楽しめる放送を二カ国語放送、あるいは日本語字幕つき英語放送にするべきであろう。また、日本語の新聞にも一部、対訳や英語記事を入れる。朝ドラやあさイチに英語で話すコーナーを入れる、国会の質疑も英語のスピーチを入れるなどなど、とにかく日常生活で英語を読んだり、聞いたり、自分で話すといった機会が保障されなければ、英語の上達にはつながらない。

「英語が使える日本人」再考も合わせて参照いただきたい。ところで、本日午後の大学院講義は英語主体で行うことになっているのだが、...さて、うまくいくだろうか。