じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



03月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§

 普段は立ち入り禁止の図書館5階を訪れる用事があり、せっかくの機会ということで、トイレの窓から外の景色のパノラマ撮影をしてみた。右手が改修工事の終わった文法経1号館。



2013年03月5日(火)

【思ったこと】
130305(火)第18回人間行動分析研究会(2)ハトとヒトの相対優位性(1)

 3月3日の続き。2番目は、

ハトとヒトの相対優位性

という話題提供であった。最初にタイトルを見た時は、ハトとヒトのどっちが優位か?という研究かと思ってしまったが、リンク先にもあるように、実際の内容は、刺激の大きさ判断において、絶対判断と相対判断のどちらが優位であるかという研究であった。

 図版を使わずに、文章だけで説明を試みてみると、まず、白い紙の上に正方形を描いてもらう。次に、正方形の中に縦線「|」の入った図形を提示し、調査協力者が自分で描いた正方形の中にも、同じように縦線を書き加えてもらう。そのさい、原刺激と調査協力者が描く正方形の大きさは異なっているが、縦線の長さはどうなるかというのが一番シンプルなFLT課題(The Frame & Line Test)というヤツである。そして縦線の物理的な長さが原刺激と同一であれば絶対判断、正方形と縦線の比率が同じになるように適宜拡大または縮小していれば相対判断であると見なされる。

 ちなみに、FLT課題を最初に提案したのは、Kitayama, Duffy, Kawamura, Lersenによる文化心理学の研究であり、日本人は相対優位、アメリカ人は絶対優位というような結果が示されている。さらにその後、同一の研究者グループによって、4歳と5最、6〜8歳、9〜13歳という低年齢でも比較が行われており、乳幼児ではどうやら相対優位性が高くでているようである。なお、これらの関連文献は、オンラインで閲覧可能(有料)である。

 話題提供では続いて、知覚・認知におけるハトとヒトの違いについていくつかの研究が紹介された。おおむね、
  1. ハトは、アモーダル補間をしない。
  2. 全体の形より、ローカルな部分を注視する傾向がある。例えば、小さな「N」または「Z」という文字を並べて形作られる大きなNと大きなZの見え方
  3. エビングハウス錯視、ツェルナー錯視では、ヒトと逆の錯視が起こっている。
といった結果が得られているようである。

 もっとも、この種の研究は、検証方法にかなりの工夫が必要である。ヒトの大人を対象とするのであれば「どちらが大きく見えますか」、「同じに見えるように調整してください」というような言語的教示で実験ができるが、ハトではそういうわけにはいかない。そこでまず、大きい方を選ばせるとか、同じ大きさなら右、異なっていれば左、というように別の反応をさせるといった訓練をしておいて、テスト段階での反応から、錯視のおこりかたを推定することになる。とはいえ、テスト段階で見せられる刺激は訓練時と異なるのが普通であり、ハトが、背景と標的刺激を区別して見ているのかそれとも、それらを融合した類似刺激として見ているのかは定かでは無い。このあたりでの相当のご苦労が拝察される。

次回に続く。