プラスチック血液型劇場

プラスチック血液型劇場

1998年12月7日
Y.Hasegawa

この連載は、なぜあまり更新されないのか

栗鼠：おやっ、洋子ひさしぶりじゃないか。どうしていたんじゃ。
洋子：授業が忙しかったのよ。はせぴぃ先生の講読の授業なんて、毎回添削してくれるのは有り難いんだけれど、サービスとか言って順位までつけてくれたりするんで気が抜けないのよ。それより、おじさんこそ、どうしたのよ。毎週1～2回更新なんて言って、ちっとも更新していないじゃないの。
栗鼠：ああっ、それやったら心配ないわい。「毎月1～2回更新」にこっそり直しといたから...。がはははｈ。
洋子：でも何であんまり更新しないの？
栗鼠：その「更新」というのはホンマは「エントリー」と言うべきなんじゃが、ま、それは良いとして、要するに、「血液型性格判断」の議論なんぞに時間をかけても人間理解に役立つような生産的な知識は得られる見通しが薄い。もっと他に時間をかけるべき問題がたくさんある。
洋子：でも、「まず『無』から出発する」と言う以上、未知を解明する必要があるんじゃないかしら。
栗鼠：そりゃ、カネと時間がいくらでもあるなら少しは調べてみたっていいさ。しかし、これまでの研究で何か1つでも確実なことが言えたかな。いや、データを集めればたまには「統計的に有意な差」だって得られるさ。しかし、それに基づいて体系的な知識が組み立てられただろうか。都合のよいデータだけをつまみ食いしているだけじゃないか。何でもかんでも未知を解明する必要があるというならば、冥王星に金鉱があるかどうかっていうのも未知だ。だけどそんなものに国家予算をつぎ込んで調べる価値はない。
洋子：あれ、おじさん急に東京弁になったりして。それはどうでもいいとして、血液型に緊急性が出てくればやるんでしょう？
栗鼠：そりゃそうや。これは心理学の分野であらへんけど、たとえば「ｘ型は、よーけい癌にかかる」なんていう可能性が出てきよったら、ｘ型の人を癌から守るために特別のプロジェクトを作らはる必要があるやろうな。うむ。慣れないキャラクターづくりは難しいのう
洋子：無理して関西弁にしなくてもいいのよ。それはどうでもいいけれど、じゃあ、何にもしなくてもよいの。
栗鼠：もしワシが血液型性格判断なんぞが全く相手にされない国で心理学をやっていたとしたら、おそらく何もしないだろう。だけど現実にこの日本では、気質でも性格でも行動傾向でも何でもいいんじゃが、そういう概念をきっちり定義しないままに、血液型でお金を儲けている人がいる。また、必ずしもその人たちに責任があるわけでは無いんだが、そこから俗説が独り歩きして差別を生み出す恐れもある。
洋子：「血液型性格判断が差別をもたらす証拠は得られていない」なんて言っている人もいるみたいよ。
栗鼠：このことは、また別の時に詳しく話そうと思っているんだが、「差別がありうるかどうか」の証明責任は、血液型性格判断を肯定する側にある。製造責任みたいなものじゃな。たとえば、能見さん監修のサイトのなかの最近の記事（1998年12/7現在）を見ると
Ａ型には、頭の中の想像だけで本気に恋をしてしまうことなんて、どうも信じられないようですが、映画のヒーローまではともかく、Ｂ型の恋の相手がシャチとは仰天！ケジメの無い柔軟性も、ここまでくればご立派ですね。
なんて書かれてある。ここからもし何らかの差別が生まれた場合、その責任の一端は能見さんにあると言ってよいだろう。
洋子：「血液型性格判断」に否定的な心理学者たちを批判している人たちも居るわね。
栗鼠：必要を感じりゃー反論するけれど、問題は別のところにある。仮に、人間の行動を片っ端から血液型と結びつけて考えようとする「血液型王国」があったとしよう。その王国の内政のいい加減さを、隣の「心理学共和国」の数名の学者が問題視した。すると、正体不明の義士？がその学者たちにいちゃもんをつける。そんな状況かな。
洋子：その一方で、「血液型王国」の中は相変わらず矛盾に満ち満ちている....。
栗鼠：そう、そこに本当の問題があるのじゃ。この世から「血液型性格判断」に否定的な心理学者たちが全部消えたからといって「血液型王国」内部の矛盾は何も消えない。心理学者のごく一部を批判するヒマがあったら、もっと自分の国の中のことを考えたほうがいいんじゃないかな。
洋子：次の話はいつになるのかしら。
栗鼠：さて、いつかのう。おや、「いつかのう」を漢字変換すると「いつ可能」になるわい。こりゃ面白い。わははは。わははは

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