970626(木)
[心理]血液型と性格をまじめに考える(9)
血液型性格判断が当たっていると思われる理由として、統計学上のトリックのほか、フリーサイズ効果、“思いこみ効果”があることを論じてきた。きょうは、残る1つ、“条件づけ効果”について書こうと思う。
 “思い込み効果”が現状認識のレベルにとどまるのに対して、条件づけ効果というのは、血液型性格判断で指摘された特徴に一致するように当人を作り替えてしまうことっをいう。
 一昨日も言及したが、血液型別の縦割り保育をやっている保育園で、血液型別のグループに分けてスイカを食べさせる場面がTVで紹介されていた。このうち、A型だけは、赤い所を残さずきっちりと食べた。これぞ、まさにA型の几帳面な性格を表すと思われた方もおられるかもしれない。しかし、よく考えてみると何か変だ。今どきの子供が、赤い部分が全く残らないような食べ方をするだろうか? うちの娘もA型だけど、こんな、カブトムシやキリギリスのような食べ方はしない。では、どうしてこんなことが起こったのだろう。おそらく、血液型別縦割り保育の中で、A型の子供には何事もきっちりさせるようなしつけが過剰に行われたためではないかと思われる。
 テレビ番組紹介の7.の表には、血液型別の子供の褒め方・叱り方、あるいは血液型別の勉強のさせ方が紹介されているが、こういう教育をしていけば、当該の血液型の特徴に合致するような行動が形成されていくのは当然だ。たとえば、いつも“やりなさい”ばかり言っていれば、几帳面で、控えめで、おとなしい“性格”が形成される(“A型的”人間)。一方、自分から始めるような雰囲気作りを大切にしてやれば、マイペースで独創的、いろいろなものに好奇心を示すような“性格”が形成される。あの保育園で、血液型別の特徴が顕著にあらわれたとしても、それは生まれつきの特徴ではなくて、保育園で条件づけられた結果である可能性がひじょうに高いのではないかと思われる。
 血液型に限らず、子供の“才能”と呼ばれる大部分のものは、親の思い込みに基づいて条件づけられる可能性が高い。例えば、Xという子供の絵がたまたま、上手に描かれていたとする。親は、子供には絵の才能があると思いこんで、上等な絵の具を買い与え、絵画教室に通わせる。こどもは、ますます絵に熱中する...。いっぽう、Yという子供は、たまたま、楽器を上手に演奏したとする。親は、さっそく、ピアノ教室にその子を通わせる。それでますます音楽的才能が伸びていくのである。もちろんそれはそれでよい。しかし、もしかしたら、Xに音楽を、Yに絵画を習わせたほうが、いっそうの能力が引き出せたかもしれない。安易な思い込みは、多様な可能性をぶち壊す。
 さいごに、24日に葬儀が行われた勝新太郎さんの血液型は何型だと思われるだろうか。また、喪主の中村玉緒さんは? この御夫婦のことは、しばしば血液型性格判断で話題になるので、その種の本を調べれば簡単に見つけられると思うが、ここでは、そういうカンニングはせずに、このお二人それぞれの行動特徴から推測していただきたい。もちろん、血液型性格判断は当てにならないという立場をつらぬけば、この問いかけ自体無意味ということになるが...。