970619(木)
[心理]血液型と性格をまじめに考える(3)
 きょうは、このタイトルの第3回を書くことにするが、書いているうちに、これはホントウに日記なのだろうか、と段々疑問に思ってきた。この日記は、自分の考えたこと、新しく知ったことを1日1題だけ書き記して、自分自身を更新しようという目的で書き始めたものであるが、こういうことばかり書いていると、他人を更新させることを目論んだ「日記」になりかねない。まあ、しかし、これを機会に、血液型性格判断についての自分の考えをまとめるのもよかろうと思う。
 さて、昨日の日記で、
  1. これは遊びなのか、まじめな話なのか
  2. まじめな話だとすると、科学的に実証されているのか
  3. 真偽は別として、なぜ多くの人が“当たっている”と思うのか
  4. 真偽は別として、なぜ、もてはやされるのか。
  5. 血液型性格判断は、社会にとってプラスになるのか、弊害をもたらすものなのか
  6. そもそも、人間を理解するということは、性格を知ることなのだろうか

という6つの枠組みを提案したが、今日はこのうちの3番目について論じることにしたい(おやおや、これでは、日記ではなくて講義の始まりだ。こんな所までやってきて、単位ももらえないのに私の話を聞いてくれる奇特な方がおられるとは、まことに有り難いことだ)。
 で、逃げられる前に、クイズを2つほど解いてほしい。まず、次の表を見ていただきたい。 この表は、いくつかの職業でO型者がどのくらいの割合を占めているのかをまとめたものである。比率に偏りがあると言えるだろうか

職業別のO型者の割合?
職業>調査人数>O型の人数O型比率(%)>
国会議員11_1_9%
小説家21_943%
歌人151171%
漫画家13_323%
歌手21_629%
俳優16_425%
落語漫才231253%
司会者16_319%


 血液型性格判断資料集の血液型別の性格特徴の表を参照すると、O型の特徴は、大まかで、行動的で大胆でスキンシップを大事にし、親切で陽気で気前がいいということらしい。すると、歌人や小説家にO型者が多いのは、物事を大まかにとらえることが、独創的な短歌の制作に必要だから。また、落語家・漫才師にもO型者が多いのは、陽気であることが成功の秘訣であるため。国会議員や司会者に少ないのは、大まかさが裏目に出るためなどと、容易に「解説」することができる。
 しかしじつは、上の表は、パソコンでランダムに作り出した比率データにすぎない。もちろん職業の割り当てもランダムになっている。パソコンではO型が選ばれる確率は31%になるように設定してあるが、調査サンプルが少ないと、こういう見かけ上の偏りが出やすい。ところが、血液型性格判断が正しい、と思いこんでいると、そこに何らかの意味があるように錯覚してしまうのである。
 さて、もうひとつ、カーネマンとトゥベルスキーが1972年の論文で論じた「病院問題」を紹介しておこう。これは、次のような内容であった。
 ある町には、二つの病院がある。大病院では毎日約45人、小病院では約15人の赤ん坊が生まれる。当然ながら、約50%の赤ん坊が男児である。しかし、正確には、男児の出生率は日によって異なっており、50%より高い日もあれば低い日もある。ところで、一年のうちで、60%以上が男児だったという日の数は、大病院と小病院とではどちらが多いだろうか。(訳文は、市川伸一『確からしさの判断』[市川伸一・伊東祐司編:認知心理学を知る、1993年]による)

 この答えは、明日のこの日記に記すことにしたい(おやおや、日記のはずなのに、宿題まで出してしまった)。
※“職業別のO型者の割合?”の表は、“長谷川芳典 (1994). 目分量統計の心理と血液型人間「学」.詫摩武俊・佐藤達哉(編) 現代のエスプリ324『血液型と性格 その史的展開と現在の問題点』,pp. 121-129. ”から抜粋したものである。