じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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1月10日(金)

【思ったこと】
_30110(金)[旅行]タスマニア原生林を歩く:そこは宮崎駿のアニメの森だった

[今日の写真] [今日の写真] 12/28夜から1/5まで、タスマニアのクレイドル山・クレア湖国立公園内の山歩きを楽しんだ。

 1/6の帰国報告にも記したように、このエリアは2000年6月にNHK-BSのオセアニア・トレッキング番組(伊達公子さん出演)で紹介されたことがあり、一度は歩いてみたいものだと思っていた。

 伊達公子さんが出演された時のコースは、今回とは逆に南側のセントクレア湖からクレイドル・バレーに向かうものであり、最高峰オッサ山(1617m)とクレイドル山(1545m)それぞれの頂上からの雄大な眺めが一番の見所として紹介されていた。

 しかし、実際に行ってみると、想像していた以上に雨が多く、登頂できたのは、Barn Bluff山(1559m)という別の山だけであり、上記2つの山は登ってもガスで何も見えないだろうということで断念せざるをえなかった。


[今日の写真] [今日の写真]  もっとも、上記2つの山からの眺めは、伊達さんの番組ですでに存分に紹介されており、仮に晴れていて登頂できてもそれほどの新鮮味は無かったのではないかと思っている。それよりも、遙かに感激したのが、「Tasmanian temperate rain forests」として知られる原生林のすばらしさであった。

 大台ヶ原や知床に行ったことはあるものの、これまで私は、これほどの規模の原生林というものを体験したことが無かった。宮崎駿のアニメそっくりの世界に直接接することができるとは思ってもみなかった。

 あくまで推測だが、伊達さんが歩いた時期は3月末、北半球で言えば秋にあたる。この時期は晴れる確率は高いが、大部分の花はすでに終わっており、番組としてはおそらく、原生林やお花畑の魅力を紹介しきれない季節にあたっていたのだろう。

[写真] [今日の写真]  ところで、原生林というのは、本来、人間の存在を必要としない生態系である。よそ者である人間の侵入は歓迎されない。自然というのは、人間にとってそれほどフレンドリーな関係には無かったのである。

 そんななか、トレッカーたちを一番悩ませたのが蛭であった。左下の写真にあるような蛭が至るところに潜んでいて、立ち止まっていると、尺取り虫のように靴の上にはい上がってくる。中には、右下の写真のように、道の脇の小枝につかまって通行者を待ちかまえているものもあった。テントの中にも2〜3匹は紛れ込んでいて、寝る前にはこれをつまみ出すのに苦労した。

 子供の頃、上田秋成の『高野聖』を読んだことのある私は、蛭に対して過剰な恐怖感を抱いていた。この旅行への参加を検討している際に、もしこれほどの蛭が居るとわかったら、おそらく申し込みをしなかったに違いない。

 しかし、慣れというのはおそろしいものだ。最初のうちは、脚や腕に蛭が着いていないか、とおびえていたが、そのうち、吸い付かれていた時に取ればエエじゃないかというように気持ちが変わってきた。実際に血を吸われたのは2回だけであったけれど、蚊に刺された時のように腫れることもない。これも原生林の景色の一部なのだ。

 蛭のことがあまり気にならなくなった頃から、不思議なことに、吸い付いてくる蛭の数も減ってきた。また、毎日びっしょり濡れながら長距離を歩いたにもかかわらず、日ごとに若返ってきたような気持ちがした。日本に戻ってからも、以前よりますます健康体になったような気がする。原生林というのは高所や砂漠のように過酷でストレスフルな環境ではない。決してフレンドリーではないけれども、生きるパワーの源であることは間違いなさそうだ。