じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] イエローナイフ滞在3日目の午後、双発水上飛行機で北緯64度のあたりまで往復する小旅行に参加した。機上からの眺めは大小さまざまの湖ばかり(写真左)。植生に変化はあったものの、片道1時間余りの飛行中は殆ど同じ景色が続いた。カナダはロシアについで世界で2番目に広い国だと言われるが、こうして見ていると、面積の半分は湖ではないかと思ってしまうほどだ。
写真右は、飛行機が着陸した湖。このあたりはもはや1mを越えるような樹木は見当たらない。何の目印も無く、曇っていたら方角を見誤ること間違いなし。
[今日の写真]



8月28日(火)

【思ったこと】
_10828(火)[心理]事故多発の介護施設

 夕食時にNHKクローズアップ現代「事故多発!介護施設で何が?」を視た。介護保険導入後の1年間に1500件以上の事故が報告されている。そのほぼ半数は転倒骨折事故であり、ベッドからの移動、洗面所、出入口付近などで発生。事故の後遺症で寝たきりとなりそのまま亡くなるというケースもあるという。

 介護保険導入後に多くの事故が報告されるようになった理由としては
  • 導入前は「施設にお世話になっている」という意識が強く、利用者家族からの申し立てにより明るみにでることが少なかった。導入後は契約意識が高まることできっちりと報告されるようになった。
  • 導入後に次々と施設が誕生し、介護に不慣れな新人スタッフが急増した。
などが挙げられるという。在宅での介護に限界を感じた家族が安全性と充実した介護を求めて施設を利用したにもかかわらず、その入所先で大けがをさせられたのではたまったものではない。

 番組でも指摘していたが、こうした事故を多発させる一因には、基準の欠陥がある。現行の基準では、
  1. 夜間の介護は、入所者40人以内ならば1名、それを越えた場合は2名と定められているだけ。
  2. 介護保険から施設が受け取る報酬は、入所者の人数と要介護度によって決まる。スタッフを増やしても何の見返りもない。
  3. 痴呆性老人は運動機能がそれほど衰えていないために、要介護度が低く評価されてしまう。
といった問題点がある。特に1.については、昼夜のサイクルがスタッフ側の勤務上の都合だけで決められている点に大いに問題がありそうだ。お年寄りの多くはすでに早朝から起きており活発に動き回っているにも関わらず、早朝は寝ているものだという、施設側の勝手な都合で人員を配置すること自体に根本的欠陥があると思った。



 ではどうすればよいのか。6月のオーストラリア研修では、シドニーのオーストラリア高齢者施設協会(ANHECA)にて、要介護者の入所補助金支給基準(Resident Classification Scale)と、施設の適格認定基準(Accreditation Standards)についてレクチャーを受ける機会があった。このうちの適格認定基準は、きわめて細かい評価項目があり、第三者機関により定期的に査定が行われている。その内容はWeb上でも公開されていると聞いた。

 事故が起こってしまった場合、施設側から「予見できない事故だったので施設側に過失は無い」と言われてしまうと家族側はそれを反証することができない。しかし、第三者機関が各施設における事故発生状況、防止マニュアルやスタッフ教育などの充実度などをきっちりと査定すれば、改善を怠った施設は最終的に閉鎖に追い込まれることになる。骨折事故の重大性を勘案するならば、このくらいの厳しい査定が入っても当然ではないかと思われる。

 ハード面でも抜本的な改善が求められる。介護施設というと、ベッドと車椅子と固い床が思い浮かべられるが、少なくとも今の世代の日本人高齢者は、長年にわたって畳中心の生活を続けてきた人々ばかりである。なぜ畳ではいけないのか、100%和風は無理としても、できるだけそれに近づけるような改善はできないのか、検討を加えていく必要があると思う。

 このほか、これはダイバージョナルセラピーの話題とも関連してくるのだが、介護施設では、
  • お年寄りがどのような能動的な働きかけを発することができるか。それらに対して結果を得る権利が保障されているか。
  • 働きかけを可能にするためのオペランダムがどれだけ多様に用意されているのか。
  • 上記2点をサポートするためのスタッフ(セラピスト)がきっちり配置されているか
という面での質的向上が求められる。これは建物内ばかりではない。屋外の庭園(あるいは菜園)や遊歩道なども安全性を考慮した上で整備していかなければならない。ベッドと集会室のソファとテレビ以外にめぼしい備品が無く、食事と排泄の世話をしてもらうだけという生活では気が滅入ってしまう。痴呆が進むのも必然であろう。