じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ベランダの水槽で育てていたサギソウが最初の花を咲かせた。白鷺が羽根を広げて飛んでいる形にそっくり。



8月5日(日)

【思ったこと】
_10805(日)[心理]心理学諸学会の「盛衰」/学会の役割について考える

 99年7月27日の日記で、日本心理学諸学会連合(日心連)に入会している30学会のうち、5/15現在で会員数の報告のあった24学会の会員数をグラフ化したことがあった。今回、2001年5月19日現在の会員数の報告をもとに、それら各学会の会員数がどれだけ増えたのか調べてみた。なお、8/1の日記にも記したとおり、日心連に加入している学会数は現在は38学会となっている。グラフ化したのは、2年前と比較ができた24学会に限られている点にご留意願いたい。

 まず、会員の増加数を図1に示す。グラフによれば、増加数がいちばん多いのは、日本心理臨床学会、ついで日本カウンセリング学会、日本教育心理学会、日本健康心理学会、日本発達心理学会、日本心理学会.....という順になっている。今回比較ができた24学会のうち、増加数が3ケタ以上であったのは9学会、4学会は減少、10学会は1〜2ケタの微増、日本家族心理学会は昨年度以前のデータということなので正確な比較はできなかった。

 このグラフから非常に特徴的な点が読みとれる。それは、いま述べた上位6学会がいずれも、学会独自(もしくは関連する認定協会)で資格を認定している(計画中を含む)ことである。具体的には というようにそれぞれで取り組みが行われている。もともとの会員が多くなければ絶対数も増えないとしても、認定資格を設置していることが会員数増加の一因になっている点は間違いなさそうだ。

 次に、会員の増加率(%)を図2に示す。今回比較ができた24学会のうち、増加数が10%以上であったのは7学会、4学会は減少、13学会は0〜10%の微増となっていた。増加率で見る限り、資格問題の影響は今ひとつ分からない。小規模学会では分母が小さくなるため、増加数のわりには率が増えていないようにも見えてしまう。ちなみに、増加数、増加率いずれでも名前が挙がったのは、日本心理臨床学会、日本カウンセリング学会、日本健康心理学会の3学会であった。

 余談だが、この「じぶん更新日記」が参加している日記才人(サイト)の実登録数(登録番号から削除番号を引いた数、管理者用を除く)は、1999年6月1日の時点で3375、その2年後の2001年6月1日で10801であり、増加数は7426、増加率は220%(3.2倍)となっている。比較にならないほどの増加ぶりである。



 もちろん学術団体の場合、必ずしも会員数が多ければよいというものでもない。十分な情報交換機能があり、相互批判と援助によってノーベル賞級の研究が次々と推進されるパワーがあるならば数十人規模でもよいと言える。しかし、なにがしかの社会貢献をめざす学問分野であるならば、会員数の減少あるいは長期停滞は結果的に社会的影響力の低下をまねく。

 そもそも、学会は何のために存続するのか。高邁な設立趣旨はさておき、学会が存続するためには、「それに入会し、活動する」という各会員の行動が十分に強化されることが絶対に必要である。では、会員を強化する要因としては何があるだろうか。
  1. 関連する研究分野における最先端の情報を交換し、自己の研究活動に役立てる。
  2. 学会誌に自分の論文を掲載してもらう。それにより、自分の研究が広く認知され、協力者が現れる。また、査読を受けた論文数が増えることで研究者としてのステータスが上がる。
  3. 年次大会や例会などで研究発表する。これにより、自分の研究の誤りを指摘してもらったり、建設的なアドバイスを受けることができる。
 以上は純粋に研究交流だけを目的とした学会の場合であるが、99年7月27日の日記でも述べたように、メイリングリストやホームページなどネットを通じた研究交流が活発になるなかで情報交換や相互批判だけを目的とした学会に参加する意義(=強化力)はしだいに低下しつつあるように思う。その時も書いたが、年に1回程度集まって研究発表をやったり、一流の国際誌でリジェクトされたような論文ばかりを集めた機関誌を発行する程度の学会に参加することにどの程度の意義があるかは分からない。

 となると、「資格」とまで大げさなことは言わなくても、学生会員の勉学に具体的な努力目標を与えるような検定試験のようなものは実施してもよいのではないかと思う。

 このほか、若手の研究者を養成するための多様なサービス、例えば
  • 短期留学のプログラムの紹介、参加サポート。
  • 英語論文の校閲
  • ネット上での相談窓口の開設
  • 現場本位の公開講座
  • 国際学会の会議出席サポート
  • 外国の研究施設、現場への研修者派遣
  • 海外からの研究者、留学希望者の受け入れ・紹介窓口
などに多様に取り組むことも必要ではないかと思っている。

 心理学関係学会の数だけで30、40というように細分化が進むと、時間的・金銭的な制約から個人として入会できる学会の数も限られてくる。企業や大学と同様、学会も生き残りをかけた競争の時代に入ったと思うのは私だけだろうか。