じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] アパートのベランダから眺める旭川の花火大会。今年はなぜか打ち上げ数が少なかったように思う。



8月3日(金)

【思ったこと】
_10803(金)[一般]タクシー運転手が足りない

 一日前の話題になるが、8/2夜放送のNHKのクローズアップ現代で、表記の話題を取り上げていた。「タクシー利用者が少ない」というならそういうこともあろうと思うのだが、不況時の転職先として人気が高いはずのタクシー運転手が足りないとはどういうことだろうか。疑問に思ってチャンネルを合わせた。

 運転手が足りない理由はきわめて明白、要するに収入が低すぎるのであった。上記のサイトにも記されているように、東京の全産業の平均年収は669万円であるのに対して、東京のタクシー運転手の平均年収は443万円、さらに全国のタクシー運転手となると、平均は338万円にまで落ち込んでいるという。全国平均の場合、4年前には430万円あったというから100万円近い減収となる。独身者なら何とか生活できそうだが、妻や子供を養い、それなりの教育を受けさせるためには厳しい額であろう。

 では、なぜ収入が減ったのか? 番組によれば、規制緩和のもとで各会社が台数を増やし会社全体の収益を確保しようとしたためであるという。となると、実は、番組のタイトルは誤解を招くようにも思える。「運転手が足りない」というのは運転手人口が急減したという意味ではかならずしもない。会社が勝手に増やした台数に対して、それに見合った運転手が確保できないという意味にもとれそうだ。番組ではタクシーの乗車率が55.2%(平成2年)から44.8%(平成12年)に減少したと言っていたが、運転手の実数が急減しているのであれば、いくら不況で利用者が減ったからといって利用率の落ち込みは見られないはずだ。となると、正確なタイトルは「運転手が足りない」ではなく、「タクシー車両、余りすぎ」ということになるかもしれない。



 それはそれとして、競争の激化が思わぬ弊害をもたらしたという点は、注目に値する。解説者の内橋克人氏(経済評論家)によれば、これはタクシー業が被る必然的な結果でもあるようだ。ファーストフード店であるならば、種々の割引セールで客をたくさん集めればコストすれすれのところでも利益を確保できる。ところがタクシーのように人件費が大半を占める業界の場合は、利用者数が限られているもとでの「薄利多売」には限界がある。安売りと同じ感覚で運転手の給料を減らされたのではたまったものではあるまい。

 では、タクシー会社として何か打つべき手はないのだろうか。番組によれば、そこでは2つのタイプの生き残り策が模索されている。
  1. 人件費をさらに切り下げるため、高齢者、主婦などをパートで雇用する。ゆくゆくは外国人の雇用も検討されるだろいうという。
  2. 会社として多様な商品を開発する。例えば空港からの乗り合いタクシーなど。
なるほど、競争原理はこういう形の変化をもたらすのか、ということがよく分かった。

 もっともこのうちの1.には不安がある。パート雇用や外国人雇用は、正規の運転手の雇用機会を奪うことになる。番組では確か、タクシー1000台あたりの事故数が100件に達したというようなグラフを示していたが、パート雇用では職員の安全指導や健康管理にも限界があるだろう。昨年11月23日の「ちょっと思ったこと」で「“史上空前の大冒険”日本のタクシーが行く東京〜ロンドン2万キロ大陸横断86日間の旅」という番組の感想を述べたことがあったが、やはりタクシー運転手には、都心の街角で「ロンドンまでお願いします」と言われたらそれに応じられるぐらいのプロ意識と誇りが求められる。

 もう1つの2.については、MK(エムケイ)タクシーの東京進出の話題が紹介された。京都に15年間住んだことのある私には、MKタクシーはお馴染み。値下げ申請や多様なサービスの提供でしばしば新聞紙上をにぎわすこともあった。余談だが、MKというのは「ミナミタクシー」のM、桂タクシーのKからつけられたというのは、HPの社史を拝見して初めて分かった。当時、とりいかずよしの「トイレット博士」という人気マンガの中で「マタ○キ」という言葉が多用されており、「MK」というとそっちの言葉を思い浮かべてしまうのだが.....

 そういえば、ちょうど8/3の朝日新聞岡山版に「軽福祉タクシー全国初の営業へ」という記事があった。軽自動車のタクシーは従来認められていなかったが、規制緩和で、福祉車両との条件つきで導入が可能になり、両備グループが8/6から営業を開始するという。車の後部ドアから車椅子を乗せられるようになっており、料金は小型タクシーと同じ。ホームヘルパーの資格を取得した運転手がつくという。

 上記のMKの取り組みもそうだが、とにかく、タクシーはもっと多様化すべきだと思う。例えば、宴会などで町中に出る時や市内観光には7人乗りがあってもよい。バスではカバーしきれない路線に乗り合いタクシーがあってもよいはずだ。車の安全基準上の障壁もあるだろうが、寝台つきのタクシーというのができれば、寝たきりのお年寄りでも思い出の場所に小旅行ができるだろう。

 それと、環境問題など考えた場合、「流し」のタクシーは原則廃止してもよいのではないかと思う。それに代えて、タクシー乗り場を市内各所に配備する。乗り場には、呼び出しボタンをつけておいて、迅速に配車できるシステムを作る。このほうが、結果的に交通量が減るし、運転手も通行中に客探しに気を取られることがなくなるので事故が減るはずだ。



 余談だが、「利用者が減ったにもかかわらず台数を増やした」という弊害は、「18歳人口の減少が予測されていたにもかかわらず大学や学部の新設を続けた」という昨今の大学事情にも共通する問題であるように思う。私立大の定員割れなどは、運転手の居ないタクシーと似たところがある。となると、各大学が生き残りのために、常勤教員の給料を値下げし、非常勤講師や、衛星経由で遠隔地の授業の活用に踏み切ることは十分に考えられることだ。いずれ「大学教員が足りない」という現象が起こることも予想される。

 それを避けるためには、上記2.に相当するような大学教育の多様化、個性化がどうしても求められる。他大学の経験に学ぶことも大切だが、物まねや流行追随では限界があるだろう。「この大学でないと学べない」という特徴を出さない限り、学生は集まって来ない。
【ちょっと思ったこと】

刑法犯発生過去最悪/自転車泥棒

 警察庁のまとめによれば、今年上半期の刑法犯の発生は約129万件で過去最悪。検挙率は19%で、その低さも過去最悪になったという。

 昨年度上半期に比べた増加数は約18万件。主たる増加分は、車上狙い(約5万件増加)、自転車盗(約4万件増加)、部品盗(約2万件増加)であるというからこれまた驚きである。私のような昔人間には、「自転車泥棒」と言えば1948年(←まだ生まれていなかったけれど)のイタリア映画が思い出される。いくら不況が長引いているとはいえ、今どき、自転車が無いために就職できないということはあるまい。しかも最近では、粗大ゴミ回収が有料となり、古い自転車は厄介物になっている。いったい何のために自転車を盗むのか、盗まれたほうはカギをかけていなかったのか、不思議でしようがない。もっとも、新聞記事などを見る限り、自転車盗の増加数4万件というのは、持ち主が「チャリンコ盗られた!」と警察に駆け込んだ件数の増加分であって、検挙の件数ではない。もしかして、放置自転車として撤去された腹いせに「盗まれた!」と言いがかりをつけているのではあるまいなあ。

 このほか、殺人、強盗、放火、強姦、略取誘拐、強制わいせつの重要犯罪は1778件増の9410件というのも気になるところだ。新聞やテレビのニュースで報じられる重要犯罪の件数は、主観的には一日5〜6件程度のように思ってしまうが、これでは半期で900件程度にしかならない。つまり、9割の重要事件は、それらが起こっていることさえ知らずに過ごしていることになる。