訳文は一部意訳。省略したところもある。また文中の「数え上げ方略(number strategy)」については発達心理学のほうで別の定訳があったかもしれないが、確認できなかった。

 心理学者は長い間、子どもたちの問題解決において使われる方略あるいは解法の組み立てに関心を寄せてきた。その中で、スイスの心理学者J.ピアジェによってよく知られるようになった研究の一分野があった。その研究は子どもたちが重さ、量、大きさ、形のような概念をどのように理解していくかに関するものであった。現代の心理学者たちも、この種の研究に引き続き取り組んでいる。
 異なる年齢の児童・中学生を対象とした研究を紹介しよう。12個の玉のうち1個だけ他より重い玉がある。天秤を3回だけ使ってそれをいかにして見つけるかというのが課題であった。心理学者は、どうやって問題を解決するかを示すとともに、また年上になるにつれて、問題解決の方略を上手に使える子どもたちの比率が増加することを明らかにした。以下の図は、子どもたちが使った天秤と玉を示したものである。

【図省略。ふつうの化学天秤とお皿に載った12個の玉の絵。】

 実験の結果を次頁のグラフに示す。《許されている3回の計量のうちの》第一段階では、大部分の子どもたちは、年齢に関係なく、12個の玉を6個ずつ2群に分け、それらを計量した。この方略は「数え上げ方略(number strategy)」と呼ばれた。第二段階では、方略の用い方に年齢差が現れた。12歳未満の子どもたちの多くと、それより年上の約半数の子どもたちは、第一段階同様の「数え上げ方略」を第二段階でも用いた。この方略を使った場合、《重い玉が含まれる群である》6個を3個に減じることができる。心理学者はまた、12歳のグループの35%が、第二段階で「推論方略(logic strategy)」を用いたことを観察した。それらの子どもたちは6個のうち2個だけをよけておいて、残りの2個ずつを計量したのである。こうすれば、重い玉がどの2個組に含まれているかを確かめることができるのだ。

【各年齢の子供が、1〜3段階目で用いた方略の比率を比較した図、省略】

 第三段階では最も多様な方略が使われると予想された。第二段階で推論方略を使った場合、《調べる必要のある》玉はあと2個だけとなるので、重い玉を見つけるのは簡単だ。これに対して数え上げ方略を使った子どもたちの場合は、3個を調べなければならない。彼らはそこで残り1回では奇数個の玉を測れないことに気づく。12歳未満の子どもたちの大部分はここで解決を諦めてしまう。しかし、それより年上の子どもたちの多くは推論に基づく方略に気づく。
 12歳前後の子どもたちは、問題解決に推論が必要であることを発見する。そこで心理学者たちは、子供が発達すると推論に基づく思考を見つけると結論した。