じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa

[今日の写真] 農学部南側の東西通りに銀杏並木。いよいよフィナーレ。

11月26日(金)

【思ったこと】
991126(金)[心理]やっぱり出てきた「お受験」批判

 文京区で2歳の女児が殺害された事件が注目を集めている。そんな中でやっぱり出てきた、と思ってしまうのが「お受験批判」である。11/27付の朝日新聞(大阪本社)記事でも“「お受験」過熱の果て?”、“有名校多い文教地帯”、“倍率21倍「名門」”、“「合格は親のメンツに」”といった見出しが並んでいた。

 今回の事件では、容疑者の家庭と被害者の家庭に同じ年齢の子どもたちがいたこと、被害者側の家庭の2人の子供がいずれも国立大附属幼稚園の抽選に通ったのに加害者側は漏れてしまったという明暗があることが犯行の動機につながった可能性があると言われている。これは確かに多くの人を「ああそうか」と思わせるような理由づけであるが、1つの現象が1つの原因だけで説明できるほど世の中は甘くない。犯行の原因をいわゆる「お受験」過熱だけに求めるというのはあまりにも短絡的で単純すぎる。Web日記作者がこの事件からの連想として「お受験」問題を論じることは大いに意義のあることだとは思うけれど、少なくとも報道機関にあっては、今回の事件の原因が「お受験」の過熱であるかのような固定観念を形成するような取り上げ方は控えていただきたいものだと思う。

 和歌山のカレー毒物混入事件に関連して1998年11月20日の日記99年5月14日の日記5月19日の日記などでふれたように、
1つの犯行が1つの原因だけで生じるということはむしろ稀で、そこには犯行を可能にする環境側の諸要因の積み重ね、犯行を余儀なくさせられた過去の間接諸要因が複雑に絡み合っている。その中で「動機」がどのぐらいの重みを持つのか同定することは容易ではない。


 というのが正しい受け止め方。しかし現実には、5月14日の日記でも指摘したように、世の中で残虐な事件が起こると一般市民は「なぜそんなことをしたのか分からない」と不安になってしまう。そういう時にマスコミが「そうか。そういう差し迫った状況があるなら私も同じことをするかもしれない」という納得を与えるような「解説」を提供すれば確かに不安は解消する。しかしそのことが本当の原因であるのか、原因の一部を構成しているとしてもどのくらいの重みを占めているのかということは別問題。ま、検察にしても裁判官にしても、結局は「みんなが納得する原因」をもって犯行動機と決めつけてしまうのはやむを得ないところなのだが、くれぐれも1つの現象が自分が納得しやすいというだけの1つの原因に結びつけて思考停止してしまうことのないように心がけたいものである。

 年末になると毎年のように、その年に起こった奇怪な事件や残虐な事件などを「十大事件」として編集しそれらが今の時代の社会的矛盾の象徴であるかのように解説を加える番組が次々と登場してくる。しかし、社会的な矛盾がストレートに奇怪な事件や残虐な事件ばかりを引き起こすというのは科学的な捉え方ではない。むしろ、誰もが当たり前と思っている出来事の中にこそ本当の矛盾が潜んでいる場合がある。地道に資料を集め、グローバルな視点から社会現象をとらえていなかければなるまい。

 そういえば、昨年末にも某TV局が私のところに岡山県内で起こった重大事件についてコメントを求めてきたことがあった。私は個別の事件についてまことしやかなコメントをする代わりに、「目立つ事件ばかりを並べても社会の本質は見えてこない。たくさん起こりすぎて当たり前だと思われているような事件に目を向けるべきだ」とか「1つの事件を1つの原因だけで説明して安心してしまうような風潮自体が問題だ」などと持論を展開した。結局、私のコメントは放映されず番組自体がボツになったと聞いた。ま、そういうことにならざるをえんでしょうなあ。

 以上のほか、センセーショナルな事件が起こるたびにそれを政治的に利用したり、持論に有利な証拠として引用したがる人達が必ず出てくることにも注意をはらう必要がある。「校長がまた自殺したらどうするんだ」とか「中学生による殺人事件が再び起こったらどうするんだ」という形で法制化とか教育改革を論じるのはディベートの方便のほうなもの。理論的根拠と異なる材料が説得の手段として持ち出されてくることはかえって本質的な議論を妨げてしまう。事件でも起こらないとなかなか関心を示さない世間の態度にも問題が無いとはいえないけれど...。
【ちょっと思ったこと】
  • 大阪府で1997年8月に開かれた「全国都道府県議軟式野球大会」に参加した徳島県議と職員の参加費の公費支出の返還訴訟をめぐる裁判で、徳島地裁は26日、「公費で議員を派遣することは旅行命令権者の裁量権を逸脱していて違法」として、出張旅費の返還を命じる判決を下したという。このニュースはテレビでも新聞でも報じていたが、被告側の言い分「国体を盛り上げるための公的な協賛行事」とか「全国の議員同士の意見交換の場」という主張には相当無理があるように思った。NHKニュースでは「司法権が立法権を侵害している」というコメントまで出されたとか。今後の対応に注目したいところだ。

  • TVのニュースで小渕首相がインドネシアに向けて出発する場面を見た。タラップを上がったところのドアに英文表記で航空自衛隊の紋章?が見えた。政府専用機というのは自衛隊管轄の軍用機だったのだろうか。
【生活記録】

[室内の写真]  この冬一番の寒波がやってくるということで、ベランダに出していたベンジャミンゴム(高さ2m)、セローム(高さ1.5m)などの観葉植物を室内に取り込んだ。すでに取り込んでいるロベヤシ(高さ1.5m)、パキラ(高さ1〜2m、3鉢)、その他各種ヤシ類、スパティフィラムなどと合わせて部屋の中はご覧の通り。たまに来るお客は「まるでジャングルみたい」と言う。

 ちなみに、観葉植物の趣味は妻由来のもの。私自身は結婚前は一年草の草花や野菜栽培しか興味が無かった。草花は1年で枯れてしまうが観葉植物だったらずっと世話ができるので愛着がわくというのが妻がそれらを好む理由。じっさい、ベンジャミンゴムなどは妻が結婚前に挿し芽から育てているもので、かれこれ17〜18年になる。そう簡単には枯らすわけにはいかない。

 観葉植物を育てていていちばん困るのは長期の旅行ができないことだ。とくに夏場は4泊5日が限界。ご近所の知り合いに頼むこともできるが、これだけ鉢が多いと躊躇してしまう。
【本日の畑仕事】
ミニトマト、トマト、ナス、ピーマン、大根、小松菜を収穫。トマトやナスはいよいよおしまいか。
【スクラップブック】