じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa
[今日の写真] モミジと時計台前の紅葉最高。

11月18日(木)

【思ったこと】
991118(木)[心理]「行動随伴性に基づく人間理解」その後(7):使えない傘と使えない消火器

 11/18の夜は、いつも家族で視ている「TVチャンピオン」があまり馴染みの無いキャラクターグッズ王だったので、代わりに日本TV系の「週刊ストーリーランド」。その中の『使えないカサ』という物語がたいへん印象に残った。あらすじを自分なりにまとめると...

 「雨男」と呼ばれうだつの上がらないサラリーマンが街角で老婆から「使えない傘」を買う。この傘を持って移動すると決して雨に降られない、つまり雨が降らなくなるから使う必要がないという意味での「使えない傘」だったのだ。
 こうしてサラリーマンは逆に「晴れ男」に変身し、花見や接待ゴルフでも重宝がられるようになる。そこで再び老婆を探し出してお礼を言ったところ、今度は「使えない消火器」を買わされた。「使えない消火器」とは、家に置いておくと、決して火事にならないという便利なもの。傘と同様、使う必要が無いので「使えない」という次第だ。
 ところがある日....
ということで興味深い結末となるわけだが、ネタバレは本意ではないのでここから先は省略させていただく。

 この話で面白いのは「使えない」ということについての2通りの意味だ。ある道具が壊れていてその機能を発揮できないから「使えない」という意味とは別に、その道具を使う必要のある事態、上記で言えば「傘にとっての雨」、「消火器にとっての火事」というように、除去すべき嫌子を別の方法で消失させるという意味が含まれている。

 ではどんな道具でも2通りの意味を考えることができるだろうか。例えば「使えない車」、「使えない時計」、「使えないパソコン」...はどうだろう。

 論理的には、ある道具が「それを活用する必要のある事態」を消失させてしまう機能を併せもつならば、すべて「使えない道具」になりうるだろう。但し、その場合、傘とか消火器のように、道具と用途が一対一に対応していることが条件となる。多用途の道具の場合、1つの事態を消失させても別の活用法が浮かんでくる。例えばパソコンをワープロとして使っている人にとっては、目の前に座るだけで自分の考えがそのままプリンタに打ち出されてしまうようなパソコンは「使えないパソコン」ということになる。しかしインターネットに接続するために使う人には依然として「使えるパソコン」になるのだ。上記の「使えない傘」も厳密に言えば、日傘としての使える可能性が残っている。

 行動随伴性の視点から見るならば、「その道具を使う必要のある事態を消失させる」ということは、「その道具を活用する行動を強化する好子や嫌子の効力をゼロレベルに低下させてしまう」確立操作であると見なすことができるだろう。このほか、嫌子自体をそっくり別の形で除去してしまうケースもある。
  • 「食べられない食物」とは、それを持っているだけで勝手に栄養が補給され満腹状態を引き起こしてしまう食物のこと。つまり食物の好子としての機能を低下させてしまう確立操作。
  • 「使えないクーラー」とは、それが部屋にあるだけで勝手に温度が下がってしまうクーラーのこと。逆に「使えないストーブ」とは、それが部屋にあるだけで勝手に暑くなってしまうストーブのこと。
  • 「使えない風邪薬」とは、それを持っているだけで常に健康が保持されるような薬。発熱や咳といった嫌子の出現を阻止する薬のこと。
  • 「使えない遺言書」とは、不老不死の効力を持つもの。
 一般的に、好子出現よりは嫌子消失の機能をもった道具のほうが道具と用途の一対一の対応がおこりやすい。そういう意味では、物語で取り上げられていた傘とか消火器はその典型になっている。作者は相当に考え抜いた末に、この2つの道具にいきついたものと思われる。

 上記とは本質的に違う意味での使えない道具もある。例えば核兵器。核兵器を保持していると周辺諸国との間に勝手に平和の雰囲気がみなぎり戦争が全く起こらなくなるというならば、まさに「使えない傘」と同じ。しかし、「相手が使ったら自分も使うぞ」という脅かしが根底にある抑止というのは、バランスの問題であって緊張の消失ではない。「使えない道具」と「使うべきでない道具」の違いを示しているとも言えよう。
【ちょっと思ったこと】
  •  獅子座流星群極大日にあたる18日未明は、あいにくの曇り空でついに見えず仕舞だったが、日本国内ですでに日が明けた後ヨーロッパで「流星雨」と呼ぶにふさわしいほどの出現があったという。

     一生のうちにぜひとも一度は見たい天文現象としては、皆既日食、巨大彗星、流星雨、オーロラなどを挙げることができる。私の場合、皆既日食と、巨大彗星については、もはや悔いを残すことが無いほど堪能させていただいたが、流星雨はとうとう諦めざるを得ないようだ。オーロラは、機会があればアラスカあたりで見物したいと思っている。

     上では4つの天文現象を並列してみたが、それぞれの現象の性格、生起頻度、予測可能性は全く異なっている点が面白い。私の理解している範囲でまとめてみると次のとおり。オーロラは資料が手元に無いので省略。
    天文現象名原因予測可能性頻度
    皆既日食太陽、月、地球が一直線上に並び、月の本影が地球表面に達すること何百年も先の日食まで、時刻や観測可能場所を正確に予測できる。数年に1回程度、地球上のどこかで観測可能。
    巨大彗星太陽系内を移動する彗星の接近。周期的に現れる彗星と、殆ど一回限りで放物線状の軌道を描くものがある。周期彗星以外は予測不能。ただし発見後の位置は正確に予測可能何十年も現れない時もあるし、続けて出現することもありうる。
    流星雨母彗星の後方に放出されたチリが地球の大気圏内に突入し高度80〜120kmで発光毎年の極大期はほぼ確実に予測可能。流星雨の確実な予測は不可能。毎年見られる流星群は20余り。ただし月明の影響あり。しし座流星雨は33年周期。
【本日の畑仕事】
観葉植物の移動のみ。
【スクラップブック】