じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa
[今日の写真] シュウメイギク。ややピンクがかった品種。昨年秋に、旧第四喫茶の建物取り壊しの時にその前庭から移植したもの。

11月17日(水)

【思ったこと】
991117(水)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(9)教養教育は要るのか要らんのか

 来年度の一般教育教養科目「心の科学」のシラバスを提出。「心の科学」というのは、かつての教養「心理学」に代わるもので、教養部廃止後、文学部、教育学部などの学部教官が、責任コマ数を果たすために毎年開講している科目の1つである。

 従来の心理学と違って、前期または後期のみの半期開講。実質的な回数は13回程度になってしまうので概論的な内容を取り入れることはできない。私の場合は、『行動分析学入門』(杉山ほか、産業図書)をテキストに、もっぱら、「やる気」とか「生きがい」に結びつくような内容を主体に、入門的な授業を行っている。

 この連載の初めの頃、10月14日の日記に書いたように、全国レベルの教養部廃止は教養教育の質をどう向上させるかという議論に基づいて行われたものでは無かった。教養部を残そうとすればいずれ定削でばっさりとつぶされる。とにかく新しい学部を作る形で改組を進めなければ...という危機感から、十分な議論をせずに慌てて廃止してしまったという大学も多いのではないだろうか。

 ところが、ここに来て、再び教養教育の意義が強調されるようになった。いくつかの大学では、授業方法の改善等の研究を含めつつ教養教育を推進する中心母体となるような大学教育センターの設置をめざしていると聞く。単なる教養部の復活ではなく、「教養部の否定の否定」による新たな発展があることに期待したいと思う。

 5年ほど前、全国的な規模で教養部が廃止された時に大学内からあまり強い反対が出なかったのには2つほど理由があるように思った。

 1つは、少なくとも40代後半の教官の場合、自分たちの大学生時代にあまり感銘を受けるような教養教育を受けておらず、そんなものいらないという共通認識があったことは否めない。少なくとも私が卒業した大学の場合当時はまだ大学紛争の影響が尾を引いており、バリケードストライキで長期間休講になったり、授業中に過激派が乱入してきて討論会への切替を要求することさえあった。いくら教官が熱心に教養教育に取り組んでも学生は満足に授業を受けられないという事情があった。このほか、英語教育にあまり実用的価値が無かったことも教養部廃止をすんなり受け入れてしまった背景にあったように思う。

 もう1つは、学部専門教育や大学院教育に比べて教養教育を低く見てしまうという固定観念があること。じっさい、
  • 学部教官ポストは教養部教官ポストより優越しているという固定観念。教養部から専門学部に転任することは一種の昇任と受け止められるが、逆に専門学部から教養部に籍を移すと「何かあったんですか」といぶかしげな目で見られるという話を聞いたことがある。
  • 学部や大学院の非常勤講師は他大学の講師以上でなければつとまらないが、教養教育の非常勤講師だったら大学院出たてのオーバードクターでもよいという考え。
  • 大学院担当教官には俸給の加算がありステイタスとしても評価されるのに対して、教養教育を担当することはステイタスとは見なされず、給与面での配慮もない。
というような固定観念は今でも根強く残っていると言ってよいだろう。

 もっとも、じゃあ長谷川自身はどうなんだと聞かれると、ちと後ろめたいところもある。私自身は、いまの岡大文学部に転任してくる前は、医療短大の一般教育を担当していた。「短大教官より四年制大学教官」のほか「一般教育担当より専門教育担当」を志向していたことは事実であるし、短大に就職する前は、医大などで教養教育の非常勤講師をつとめておりその教育経験があったことも、採用に際して評価してもらえたように思う。

 教養教育担当の非常勤講師は、長年その分野で研究を積み重ねてきた名誉教授クラスにお願いすべきだという議論があり、私もこれに賛成している。その一方で、せっかくそういうポストがあるのだから、就職の決まらないオーバードクターを救済する手段として活用すべきだという主張もある。これについて私は「教養教育は受講生本意で行うべきものであるから、救済手段などと考えるのは言語道断。教養教育をないがしろにするものだ。」との猛烈に反対しているけれども、自己矛盾ではないかと言われると反論しがたい。

 おそらく、教養教育というものを教授者側からの一方的な講義という枠でとらえる限りは、この矛盾は解消しないようにも思える。大学紛争が盛んだった頃は「自主ゼミの単位認定」というのも話題になったようだが、いつの間にか途絶えてしまった。政治的に利用されたことにも原因があったのかもしれない。

 もしオーバードクターに非常勤講師を担当してもらうのであれば、「自主的に問題をみつけて学ぶ」という自主ゼミ型の教養教育を実現してもらってもよいのではないかと思うのだが、既存の「講義」という枠を変えていかない限りは実現は難しいかもしれない。
【ちょっと思ったこと】
  • このところ郵便局の職員が事あるごとに定額貯金のことを口にする。周知のように来年以降は、高金利時代に預け入れたものが次々と満期になる。払い戻しせずに、引き続き預けかえてほしいという要望なのだが、これだけ低金利になってしまった今、いくら懇願されたところで、大事な虎の子をそう簡単に預け直すわけにはいくまい。預貯金や債券のようなものは、金利が高ければ黙っていてもお金が集まってくるもの。どっかの貸し金業の社長の言葉ではないが、われわれは郵便局への慈善事業のために金を預けているわけではない。いかに有利かという合理的根拠を示して貰わないかぎりはその意にそうわけにはいかない。

    そういや、先日、近くの郵便局から「満期になった定額貯金をどうしますか。回答していただいたらもれなく粗品贈呈」というアンケートが送られてきた。とりあえず「満期後は未定」という回答を送ったところ、贈呈された粗品はなんと入浴剤1回分だった。ま、別のところからクレームがつくので粗品に金をかけられない事情はよく分かるが、その程度の「感謝のしるし」で心を動かされる私ではないぞ。
【本日の畑仕事】
ミニトマト、小松菜、ナスを収穫。観葉植物を移動。
【生活記録】
  •  18日未明は、獅子座流星群観望のチャンスであったが、あいにくの曇り空で結局1つたりとも眺めることができなかった。23時〜1時頃は晴れていたが5分ほど待っても1つも流れず。3時と4時は完全な曇り空で、この時期にひときわ目立つ明けの明星さえ見ることができなかった。まことに残念。

     「たくさん見えるかも」などと報道すると実際に見えなかった時にマスコミに苦情が殺到するところだが、曇っていたのではしようがない。ということで誰も責任を追及されずに済んだかも。
【スクラップブック】