じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa
[今日の写真] チトニア。百日草によく似ているが色も形も地味なため一般の花壇ではあまり見かけない。いったん植えると丈夫でよく増える。

11月12日(金)

【思ったこと】
991112(金)[心理]「行動随伴性に基づく人間理解」その後(2):Web日記を書くことはどのような随伴性によって強化されているか

 昨日の日記の続き。インタビュー調査などを通じて、行動随伴性の視点から生きがいをとらえていくには
...行動もその結果もできうる限り具体的に把握していく必要がある。例えば「仕事をした→満足感があった」というのではあまりにも抽象的。仕事のどの段階でどういう変化が生じたのか、その変化が好子出現にあたるのかどうかといった問題を、もっと具体的に把握...
することが必要であると指摘した。少し前に、この日記も登録している日記猿人で、投票ボタンに関連して日記を書くことや投票を得ることが話題になっていた時期でもあるので、「web日記を書く」ことを例として、具体的に把握するとはどういうことか、考えてみることにしたい。

 まず、毎日のようにWeb日記を更新(エントリー)している人が居るとしよう。聞き取り調査をすれば、「web日記を書くと楽しい」という答えが返ってくるがこれは具体的な「行動→結果」とは言えない。典型的な日記猿人登録日記の場合に想定される具体的な結果としては、
  1. web日記を書くことでじぶんの考えが整理され新たなアイデアが生まれる
    【行動内在的・好子出現随伴性】
  2. web日記を定期的に更新することに付随して規則的な生活が維持され健康が保持される
    【執筆自体に内在するものではなく、それに付随する行動についての行動内在的・好子出現随伴性】
  3. web日記を日記猿人に登録し、得票を得ることで励まされる
    【付加的・好子出現随伴性】
  4. ReadMeや自前のカウンタ等の増加によって励まされる。
    【付加的・好子出現随伴性】
  5. 空メイルボタン押しによって励まされる。
    【付加的・好子出現随伴性】
  6. 付設の掲示板の書き込みによって励まされる。
    【付加的・好子出現随伴性】
  7. 毎月の日記猿人の得票ランキングを下げないように更新を維持する
    【付加的・好子消失阻止の随伴性】
  8. 日記執筆連続記録を止めないように更新を維持する
    【付加的・好子消失阻止の随伴性】
 以上は、Web日記執筆自体に内在的な結果によって強化される「行動内在的な好子出現随伴性」、読者の反応によって強化される「付加的な好子出現随伴性」、すでに強化された後に、そこで得ていた好子を失うまいとして義務的に維持される「付加的な好子の消失阻止の随伴性」の3つに大別できる。

 このうち、1番目の「行動内在的な好子出現随伴性」は、競合的行動(仕事の忙しさとか他の趣味に費やす時間)による妨害を受けない限りは、Web日記執筆を長期間にわたって強化し続けるものと予想される。3年以上日記を書いているような人は、部分的であるにせよこの随伴性が必ず関与しているはずである。

 2番目の「付加的な好子出現随伴性」は、読者の反応に依存して強化されるものであるから、浮き沈みが激しい。
  • 得票やカウンタが増えないことに嫌気をさして止めてしまう場合もあるし
  • 得票増加狙いから、日記執筆本来の行動内在的な好子を見失い、やたら目立とうとする場合もある。
  • 現実の人間関係が満たされない人がネット上での交流でそれを埋め合わせようとしていた場合は、現実生活が幸せになることでネット上の交流が不要となり更新を止めてしまうこともあるだろう(←最近、日記の更新を休止している人々がみな幸せになったという意味ではもちろんない)。
 3番目の「好子消失阻止の随伴性」は義務的に行動を維持させるものであり、これが長続きすると楽しさは失われストレスの原因にもなりうる。高得票を得ていた日記が突然終了されてしまうのは、3番目に端を発したものが多いように思う。

 以上、「web日記を書くと楽しい」という抽象的な「行動→結果」が、随伴性のレベルで細かく分類できるという事例を示した。しかしこれでもまだ十分な分類とは言えまい。例えば日記猿人で高得票を得ることによって強化される場合でも、自分自身に対する得票の増加(個体内比較)が強化的になる場合と、上位に上がること(個体間の相対的比較)が強化的になる場合では、執筆行動に質的な違いが生じるものと予想される。どっちにしても、得票だけを生きがいに日記を書くような人は決して長続きしないだろう。

 自分自身がどの随伴性によってWeb日記執筆を維持しているかは、実験的に特定の結果の随伴を外してみればすぐに分かることだ。例えば、
  • 投票ランキングから一時的に離脱しても執筆量、執筆内容、更新頻度に全く変化が生じないことが分かれば、その人にとっては、得票という結果は付加的好子として全く機能していないことが証明されたことになる。
  • ハードディスクがクラッシュして過去ファイルがすべて消えてしまったために執筆意欲を失った人がいたとすれば、行動内在的好子の出現が大きな役割を果たしていたことの証明にもなる(←といって、消えてしまったのではもはや手遅れであるが)。
 もう1つだけ付け加えておくと、web日記執筆を維持する強化随伴性は、執筆開始当初とその後では必ずしも同一でない。ほんらい行動内在的随伴性だけで書いていたような人でも、得票が大幅に増加すると、内容を変えてでも読者のニーズに応えようとする場合が出てくる。そしていずれは、高得票を維持することの重圧感(好子消失阻止の随伴性)に耐えかねてランキングから離脱し、天文現象として知られる白色矮星のような日記に転じる場合もある。そういう意味では、自分がどういう行動随伴性に維持されてWeb日記を書き続けているのか、常に点検していく必要があるだろう。
【ちょっと思ったこと】
  • この冬初めて灯油を買いに行く。昨冬は、開店したばかりのGSが18リットル450円で販売していたので大助かりだったが、今年はなんと630円に値上げしていた。GSが開店する前にもっぱら利用していた米&灯油販売店が580円の看板を出していたのでとりあえずそちらで購入。今年のほうがいくらか財布が寒い冬になりそう(価格はいずれも持ち帰り、税別)。

  • 11/13朝のNHKニュースで、日本の高度成長期に作られた産業映画の話題が取り上げられていた。保存状態があまりよくないものもあるという。建設中の霞ヶ関ビルの鉄骨の上を歩く鳶職人に象徴されるように、あの時代の労働にも行動内在的な好子出現随伴性があった。フィルムからこうした部分を拾い出すことも、日本の労働者の働きがい、生きがいの歴史的変遷を辿る上で大切かと思った。
【本日の畑仕事】
ナメクジよけの薬をまく。
【スクラップブック】