じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ユッカ。子供の頃、実家に庭に2株ほどあった。針のようにとがった葉をきりとって腰に挿してピーターパンごっこなどをやったものだが、今考えるとずいぶん危ない遊びをしたものだ。岡大事務局前にて。


6月30日(水)

【思ったこと】
990630(水)[一般]「医学専門学校」も大切だが、医師の分業化も検討すべきでは

 新聞やテレビの報道によれば、文部省は、一般の大学卒を対象にした「医学専門学校(メディカルスクール)」の新設の検討するための「調査研究協力者会議」を発足させるという。多様なルートで医師を養成すること自体は大いに賛成だが、その根拠として伝えられているロジックには少々奇妙に思われるものがある。7/1付の朝日新聞記事をもとにいくつかあげてみると
  1. 「偏差値エリート」より情熱家を【新聞の見出し】
  2. 各地で医療ミスが相次いでいることもあり、幅広く異分野の知識を身につけた上で医師を志せるような制度を確立すべきだ、
  3. 入試が難しくなった結果、医師の仕事に強い意欲を持っている人が入学できない。
  4. 入試の突破が大目標になり、入学後に確たる目的意識が持てなくなっている
  5. こうした仕組みを設けることで、幅広い教養を身につけ、真に医師の仕事に情熱を持つ人を医学生として受け入れる利点があるという。
 ここでまず私が問題にしたいのは「偏差値エリート」が何を指しているのかということ。統計学的な意味での偏差値というのは、何らかの形で測定されたデータを平均が50、標準偏差が10となるように変換した値にすぎない。偏差値が高いというというのは、その集団の中で測定された能力が相対的にすぐれていることを示すだけで、そのことと情熱が高い低いというのは全く無関係。「人間はみな平等でなければならない。学力が高い人は、その高い分だけ何かが劣ってなければ不公平である。だからその分だけ情熱が低いはずだ。」というような妙な平等感?に振り回されているのではないだろうか。

 次に5番目の「幅広い教養を身につけ、真に医師の仕事に情熱を持つ人を...」というくだりだが、ここ何年かのあいだに全国の大学で行われてきた教養部廃止、教養科目の必修単位削減の流れはどう受け止めているのだろうか。教養部が廃止された根拠の1つは、せっかく専門家になろうと思って入学してきたのに、専門科目と全く異なる教養科目ばかり受講させられ、専門への情熱を失って無気力な学生が生まれる...それよりは1回生の時から専門基礎科目的な内容を増やすべきだ、というロジックがあったように思う。

 ここで言われているように、本当に医学部以外の学部で幅広い教養を身につけ、その結果として医師になろうと目覚めたというなら話は分かるが、もともと医師を目指しながら高卒時点で医学部に入学できなかった学生が、とりあえず別の学部に入学しておいて大学生向けの「医学専門学校予備校」に通いながら卒論を書くというのでは、それこそ他学部は腰掛け入学になってしまう恐れがある。

 あくまで門外漢としての発言になるが、「医学専門学校」以前の問題として、医師という単一の国家資格をもう少し多様化する方向の議論があってもよいと思う。町医者開業医として子供やお年寄りを主体に診療をする医師に高度の専門医療の知識まで求める必要は無いと思う。町医者開業医に求められるのは、ちょっとした薬だけで治る患者と緊急に専門医の治療を必要とする重病の患者を見分ける力である。後者の患者は応急措置を施して専門病院に送り込む手続をすれば十分であって、自分の手で最後まで治す必要はない。また町医者開業医は対人接触が中心となるので、患者に対する心のケアも大切な仕事となる。

 いっぽう、高度な専門医療の現場でももっと細分化した技能が求められるはずだ。例えば移植手術を実施する場合、指揮をとる医師にはあらゆる事態に対処できるような総合的な知識が求められる。それに対して、血管を繋ぐような細かい職人技は、知識よりも手先の器用さが要求される。さらに、医療ミスを防ぎ緊急事態に対処するためには戦闘機のパイロットのような緻密で臨機応変の対処ができる能力が要求されるであろうし、高度な医療機器を操作するにはエンジニアのようなメカに強い知識が必要になるはずだ。

 こういうさまざまな個別的な能力・技能に対応した資格を定めて、それに見合う国家試験を実施し、分業化を図っていかなければ高度な医療は難しくなるだろう。よく言われることだが、医師の国家試験問題を20年、30年のキャリアのある現職の医師に受験させたら何点ぐらいとれるのだろうか。もし自分の専門以外のことをすっかり忘れてしまっているとしたら、それは無駄なことまで覚えさせただけの教育になる。分業化を図れば、総合的な偏差値が低くても、それぞれの能力に秀でた人が入学できるようになるので「入試が難しくなった結果、医師の仕事に強い意欲を持っている人が入学できない。」という事態も避けられるはずである。

※[7/5追記]「町医者」という表現は「町のお医者さん」という親近感を込めて使ったつもりであったが、その後「町医者という言葉はやや侮蔑的な意味合いを持つ」とのご指摘をいただいたので、「開業医」という表現に改めさせていただいた。ご指摘ありがとうございました。
【新しく知ったこと】
【生活記録】
  • 大雨から一夜明けて快晴。夕食後の散歩時には月齢16.7の月がくっきりと見えた。月の赤緯は毎月、±20度の範囲で変化するが、夏至の前後は満月の位置に来たときにいちばん南に下がる。今年の場合は6/29の時点でマイナス20度12分。
  • 6/30のNHKローカル番組「きびきびワイド」で春車菊がいちめんに咲いた写真を紹介してくれた。Eメイルで添付した写真がこの番組で紹介されたのはネジバナに続いて2回目。残念ながら大雨のため花が傷み、またすでに種を結んでいる株が増えてきたので、撮影時(6/22)に比べると花の数が減ってしまっている。
【5LDKKG作業】
  • メロンの蔓が1株枯れてしまったので、実2個を切り取る。キュウリ2本収穫(計53本)ミニトマト2個収穫。キュウリなどの葉を消毒。
【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。)】