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昨日の日記

5月18日(月)

【思ったこと】
980518(月)[社会]民主主義は何のためにあるか(1)
 ちょっとフォローが遅れたが、世界旅行の出発が間近いシリコンバレー留学中「神田日記」 さんが5月16日の日記で「民主主義について」とりあげておられた。インドネシアでの騒乱のニュースが伝えられる昨今、私も、この問題についていろいろ思うところがある。

 初めにおことわりしておくが、私はこの方面には全く素人で、民主主義を提唱した思想家の名前も、いろんな国の制度のことも、受験勉強で頭に詰め込んだきり、すっかり忘れてしまった。思い出せることと言えば、リンカーンによる「人民の、人民による...」ぐらいのものだろうか。

 ところで、民主主義はなぜ必要なのだろう? だいぶ昔のことで忘れてしまったけれど、小学校から高校に至るまで、このことをあまり真剣に考えたことが無かったように思う。というより、小学校のころは、まだまだ戦後間もない時期であり、民主主義は正しいのが当たり前で、疑問を懐くことさえなかった。ヤクザでさえ、「おまえんところは民主的でないぞ」と言って脅迫をしたいう冗談のような逸話まで聞いたことがある。

 民主主義と言っても、神田さんご指摘のようにいろいろな制度があり、「議会制というのは民主主義実現のための一手段に過ぎない」わけであるが、近代国家は殆どが議会制民主主義を取り入れている。したがって、このシリーズ(←いずれのシリーズも不定期連載でぇーす)では、単に「民主主義」と言う場合は議会制民主主義のことを示すものと考えていただきたいと思う。

 では、議会制民主主義はなぜ必要なのか? 結論から先に言えば、それは人類が数々の犠牲を教訓として知恵をしぼって作り上げた最高の「暴動回避装置」であるから、というのが私の考えだ。つまり、導入の経緯や諸々の民主主義思想はどうあれ、現状において、多くの近代国家で議会制民主主義が定着している最大の理由は、国民の不満・不平が暴動に進展しないための最も有効な回避装置として機能しているからである。
 インドネシアで暴動が多発しているのは、政治の仕組みに有効な「暴動回避装置」が組み込まれていないことが一因となっているように思う。
 私の知る限りでは、インドネシアは、国会の500議席のうち、425議席が選挙で選ばれ、75議員は軍に任命される。選挙中は、政党同士が相手を批判することは許されず、スピーチは警察の事前検閲を受ける。そして、500人の国会議員は、大統領が推す同数の任命議員とともに、国の最高議決機関である国民協議会を構成するしくみになっているようだ。
 いくらなんでも大統領は反対派を任命議員に推すことはしない。野党勢力が選挙で全議席を占めたとしても、なお過半数には至らない。政権内部の派閥争いが激化しない限りは、大統領の地位は制度上は安泰。逆に言えば、国民は、経済混乱が続いた時に、窮乏に耐えるか、暴動に訴える以外に国民がとりうる道は残されていないことになってしまう。
 民主主義が徹底した国であれば、国民はいつでも大統領や首相を辞めさせることができる仕組みになっている。しかし、これは裏を返せば、「政権を批判したかったら、暴力に訴えるのではなく、ちゃんと選挙に勝って、国会に出てきてから文句を言え」という意味にとれなくもない。
 「文句が出ない工夫」については、じつは昨年の8月5日の日記でちょっと考察したことがある。インデックス作りが遅れていてまだジャストネットのサーバにアップしていない。このシリーズを終えるまでには必ずアップを完了しておきたいと思っている。
 きょうは時間が無いので、このシリーズで私が指摘したいことの概略を示す。おことわりしておくが、私は決して議会制民主主義の否定論者ではない。あくまで議会制民主主義を守るべきだと考えている。ただ、民主主義を安易に崇拝したり絶対化することは、結果的にそれを形骸化させる恐れにつながる。それを避けるために、もういちど根底からこれを見直すこと、例えば独裁政権は何故いけないのかということから問い直す必要があるというのがこのシリーズの趣旨である。
  • 小学校から高校までの社会科の授業で、民主主義が大切である理由をどのように教えているのだろう。
  • 王制は国王や貴族の贅沢によって国民に負担を強いる政治制度であるように思われがちであるが、議会制民主主義で議員に支払う給料のほうが遙かに高いコストを伴っていることに気づく必要がある。
  • 議会制民主主義であるからといって、必ずしも、最も有能な政治家がリーダーになれる訳ではないし、最も有効な施策が承認されるだけでもない。時として、人気投票になったり、人気取り政策がもてはやされることもありうる。
  • 民主主義は高邁な思想でも宗教でも、絶対的真理でもない。
  • 民主主義の浸透・徹底の度合いと、経済的安定や治安の良さは独立した問題だ。王制や賢人政治でも国民の基本的人権を保証する手だてはある。
  • 多民族国家では、通常の選挙方式による議会制民主主義を導入しても暴動回避装置にならないことがありうる。
【ちょっと思ったこと】
980518(月)[生活]NHKラジオ英会話の新シリーズ
 NHKラジオの「英会話」の講師が大杉明先生からマーシャ・クラッカワー先生に交代したことについて3月13日の日記にちょっとだけ感想を述べたことがある。4月のうちはどうも新しい雰囲気に馴染めず、大杉先生の時の方がよかったなあなどと思ってみたりしたものだが、1カ月半ほどたってみると、かえってスラスラと頭に入りやすくなったような印象を受けるようになった。
 1つは、男性のパートナーの方(Michael Naishtut氏)がイントネーションを強調するしゃべり方をするために記憶に残りやすいこと。そして、もう1つ、おそらくこれが決定的な違いだと思うのだが、話題が自然保護から教育現場へのコンピュータ利用の話題と、私個人として非常になじみやすいストーリーになってきたことである。今日はちょうど、EメイルとSメイルやインターネットのことをとりあげていた。しんつまさんの英会話勉強にはもってこい...と思ったが、簡単すぎてツマラナイかもしれない。
 自慢ではないが、私は御帰国中のエンドーさん初め、海外在住の日記作者諸氏、ホリウチさん、れっきいさん(←最近、マジで改名した?)ほか、諸々の英会話の達人のように流暢には英語をしゃべれない。NHKラジオの「英会話入門」と「英会話」を欠かさず聞くようになって今年が4年目になる。
【新しく知ったこと】
【リンク情報】
  • NHKのミニ情報で、フォーラム開催中とのお知らせがあった。「日記猿人界」からも多数の発言があるのではないだろうか。
【生活記録】
  • 5月13日の日記に引き続き、本日夕方もコウモリが多数乱舞していた。ベランダから南の空を眺めてざっと数えたところで120頭。どうもこの数年で増えているような気がしてならない。
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
  • インドネシアで18日、ハルモコ国会議長が大統領の退陣を要求。
  • 時限再販第一号の「週刊ポスト」5月8日号が18日より、都内の一部の書店で値引き販売。
  • 国土地理院、緯度・経度の位置を日本測地系から世界測地系に変更する準備。測量法の改正案が来年1月にも国会に提出。承認された場合、同じ緯度・経度の地点は従来より北や西方向に約300メートルずれる。[5/18朝日]
  • 英国のサンデー・タイムズの報道によれば、ケンタウルス座方向の17光年かなたにある直径12800kmの星は、スプーン一杯の質量が1トン相当の高密度で、巨大ダイヤモンドの結晶の可能性の可能性があるという。