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昨日の日記

4月23日(木)

【思ったこと】
980423(木)[心理]「心の科学」の必要条件(3)自己理解に役立つもの
 火曜日に行ったアンケート報告の最終回。4/21の日記で、より積極的な受講理由としては、「自分を理解したい」「他の人のことを理解したい」というのが、「看護学校生の約5割、短大生の約3割を占めている。」というデータを示したが、今回の質問は、「自分を理解するためには、どういうことを知る必要があると思いますか。重要だと思うほうから、1、2、3というように順位をつけてください」となっており、下の図では、1位に選ばれた回答項目が何%であったかを示している。
 これと同じ質問は、昨年4月にも短大の前年度受講生にも実施しており、この時の比率は、「性格」が78.5%、「自分の思想」が6.9%、「生育史」が4.6%という順になっている(こちらにデータあります)。今回の調査でも、「性格」を1位にした者は両校ともちょうど2/3であり、1位を誇っている。2位以下の「自分の思想」や「生育史」の順位も殆ど変わらない。かなり一般性の高い傾向であると言えよう。
 問題は本当に性格を知ることが自己理解に役立つのかということである。これについては、公用ホームページでも論じたように、私はどちらかというと否定的な立場をとっている。その論点は以下のとおりだが、ご興味をもたれたらぜひ原文をお読みいただきたいと思う。
  1. パーソナリティという視点から自分を理解しようという試みは、第一に、状況を越えた行動の一貫性を過大評価する恐れを含んでいる。これは、Mischel(1968)に始まる「一貫性論争(consisntency debate)」に端を発したものである
     専門的な議論は別として、「状況を越えた行動の一貫性」が、素朴なレベルでの自己理解を固定し、自分の行動の可塑性・柔軟性を否定してしまう恐れはないだろうか。例えば、性格テストで「内向的だ」という結果が出ると、何かのパーティに誘われた時にも、「どうせ内向的なんだから、行っても面白くない」と考える。あるいは、「支配性や協調性がない」という結果が出ると、リーダーに選ばれても辞退してしまう。そういう消極的な対応は、未知の環境に挑戦する可能性を妨げることになる。
  2. 第二の問題は、何か行動が生じた時に、その原因を、その人の「性格」や「能力」ばかりに帰着させ、環境や状況の影響を過小評価する恐れである。たとえば、ある少年が家庭内で暴力を振るうようになったとする。この少年に対して“攻撃的”とか“非協調的”といったレッテルを貼るのは簡単である。しかし、それでは何も解決できない。まして、その少年が暴力を振るうのが学校から帰った直後だけであり、休日にはまったく起こらなかった、というようなことがあれば、この少年の外部的な関わりをもっと詳細に調べる必要が出てくるのではないか。
  3. 第三の問題は、そもそも性格やパーソナリティは行動の原因にはならない、という根本的な主張である。近年の特性論的な性格理論は、他者との相対的比較を前提としている。しかし、行動は、その個体と環境との関わりの中で生じるものである。他者との比較の中に原因が見い出せるはずがない。

 「自己理解」の代わりに「自動車理解」を考えてみるならば、「性格による自動車理解」とは、ガソリン車なのかディーゼル車なのか、4WDか2WDか、事故車かどうか、最高速度はどのぐらいまで出せるかといった特徴を、他車との相対比較の中で明らかにするようなものであろう。それも、エンジンの構造上の問題までは立ち入らない。こういう側面から「自動車理解」をはかることも無駄とは言えないが、実際にどうやって車を運転するのか、どういう道路でどのぐらいのスピードを出せるのか、雪道での安全性はどうか、といったことは結局走ってみなければ分からないのである。
 上の例が適切かどうかは分からないが、車と違って自分は買い換えるわけにいかない。固定的な性能にこだわるよりも、どう運転していくか、どの道を走らせるのかを考える。逆に、実際に走らせてみれば性能もわかってくるのだ。自己理解に戻れば、要するにどのように行動していくのか、その際に、自分の行動が他者にどういう結果を与えているのか、自分の行動はどういう結果によって維持・強化されているを知ることのほうが有用であろうというのが私の持論である。

[Image]
「自分を理解するためには、どういうことを知る必要があると思いますか。重要だと思うほうから、1、2、3というように順位をつけてください」という質問に対して、1位に選ばれた回答項目の比率。
【ちょっと思ったこと】
  • クローン羊のドリーが無事出産したとのニュースが4/24朝のNHKニュースで伝えられた。これについて、「クローン羊でも生殖能力のあることが実証された」というように解説されていたようだったが、正確な結論は「クローン羊は生殖能力がないという通説に対して、必ずしもそれが成り立たない一例を示した」ということになるであろう。
【新しく知ったこと】
  • 石油情報センターが23日に発表した4月10日現在のガソリン価格は、リットル94円と過去最安値を記録したそうだ。テレビや新聞の報道によれば最安値は岡山県の84円であるというが、市内ではもっと安い。4/23の時点では市内の殆どのスタンドが78円、高いところでも80円の看板を出している。
【リンク情報】
【生活記録】
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
  • 清水行雄・東大阪市長ら、知人女性の架空転居、保険証不正取得疑惑で逮捕。「(警察と検察は)日光の猿やないけど、反省しているのとちゃうか」、「もう(新聞は)読まない」などの発言で知られるほか、闇献金、申告漏れ、公共工事入札などで種々の疑惑がとりざたされている[各種報道]
  • 中原永世十段、元女流名人林葉直子さんとの「不倫関係」を求める。23日、自宅での記者会見。[4/24 朝日]
  • 日銀大阪支店長の社宅が敷地3688平米(1117坪)、建物が439平米(133坪)と豪華であることについて、日銀理事の答えは「地震など緊急時の対応や大阪支店長の役割を考えれば意味がある」。家賃や、阪神大震災の際の建て替え費用は公表されていない。[4/24 朝日新聞天声人語]