当月のインデックスへ戻る

昨日の日記

4月14日(火)

【思ったこと】
980414(火)[一般]諫早湾干拓「閉め切り」から一年
 4/14で、諫早湾干拓「閉め切り」から1年となった。当時、日記界でもこの問題を熱心に取り上げられていた方がおられたが、残念ながら、現時点では現状固定化・既成事実化が進みつつある。
 この問題は、「一代限りの目先の利益を優先するのか、それとも何世代も先の子孫のための地球環境を守るのか」といった環境保護の問題や公共投資の仕組みの問題に加え、科学的なデータの中から行政の御都合のよい部分だけが取り出され、いかに世論誘導に利用されているのかという問題を考える上でも貴重な資料を提供している。
 1年経過を機に、昨年の私の日記の1つ「スクラップブック」に要約引用したことをいくつか箇条書きにしておく。主として朝日新聞記事から。日付の新しいものが上にきている。
著作権の問題については、いろいろ議論があるが、私は、仮に新聞社等が、著作権保護をタテに、正確な事実や知識の伝達を阻害する圧力をかけることがあれば、断固として反対する。但し、孫引きの繰り返しは、不正確な伝達のもととなるので、ここからの転載は避け、必ず日付前後(いずれも昨年分)の元記事にあたってほしい。
  • 干潟には自然の強力な浄化能力がある。「諫早湾干潟の浄化能力は3000億円の下水道設備を建設したのに相当する」と言われている。(10/14)
  • 農水省、諫早湾干拓調整池等水質委員会における「アオコの発生を抑えるためには塩分濃度を保つ必要があり、水門操作やポンプの活用によって調整池に海水を入れることも検討すべきだ」と発言発言を削る(8/4)
  • 調整池の水質が4月14日の潮受け堤防締め切り後から悪化し、好転していないことが30日明らかになった。(6/30)
  • 主要国首脳会議に出席した橋本首相は、外国人記者からの質問に対して、「ムツゴロウは増えている」「渡り鳥は近隣の干潟に移っている」などと述べたそうだ。しかし、ムツゴロウの漁獲データは佐賀県にしかない。一時激減したものがわずかながら増えているにすぎず、地元の漁師が諫早湾まで出かけてとったものも含まれている。また、渡り鳥については飛来数を調べた形跡がない。(6/26)
  • 橋本首相は「諫早では、過去にどれぐらいの水害が起こり、どれだけの人が亡くなったかご存知か」と反論した。しかし、40年前の諫早大水害の被害を大きくしたのは、本明川の橋に流木などがひっかかり、濁流があふれ出したことによるもので、今回の干拓がめざす防災「効果」とは関係ない。(6/26)
  • 県知事を会長とする干拓推進協議会は先月、防災干拓PRの新たなパンフを配布した。この中には、200年以上前の雲仙・普賢岳の噴火に伴う熊本県の大津波災害や、15年前の長崎市の大水害による死者数も入っていた。(6/26)
  • 農水省は「諫早大水害」を防ぐかのように主張してきたが、今回の干拓は、上流の諫早市街地の洪水対策には、ならない。九州農政局は「この事業は農地の防災であって、市街地の防災ではない」と認めている。(6/20)
  • 下流の低地の防災効果も、排水ポンプの操作が2、3日分減る程度のもので、大規模干拓事業の効果として強調できるものではない。(6/20)
  • 洪水や排水効果に疑問が残るようなデータは農水省の事業計画書には盛り込まれていない。本年5月中旬の大雨の際にも、当初は「約60ヘクタールにわたって水田が10センチ程度、一時的に冠水するにとどまった」と効果を強調したが、その後の市民団体の指摘によって、冠水面積を160ヘクタールに修正した。これまでの経過を見ると、農水省は事業推進に都合のいいデータだけを強調している。(6/20)
  • 干拓事業が環境にどのような影響を与えるかを記した公文書には、「生態系」の項目がない。特に鳥類の調査がずさんだ。(6/20)
  • 水産庁中央水産研究所は、愛知県の一色干潟で、有機物の流れを知るために窒素の出入りを調べた。夏には1日当たり約2トンの窒素が河川や沖合から入り込む。1トンは植物プランクトンに、残り1トンは砂粒の表面にとりついて生きる単細胞藻類の付着珪藻に取り込まれ、浄化されることがわかった。同研究所の松川研究室長によれば、一色干潟や東京湾の三番瀬など千ヘクタール規模の干潟がもつ浄化能力は、「人口10万人分の下水処理場に相当する」という。(6/11)
  • 13、14日にかけての雨により、諫早湾の周辺地域で田畑が冠水する被害が出ていることが20日、自然保護団体の調査でわかった。農水省は伊勢湾台風級の高潮と諫早大水害が同時に発生しても問題ないと防災効果を強調してきたが、その効果に疑問の声があがっている。(5/21)

<追記>14日、島村農水相は閣議後の記者会見で「野鳥がいなくなったというが、野鳥の全体数はむしろ上回っている」、「地元からは風水害などの被害を受けずに済んだと感謝状をもらっている」(朝日4/15記事)などと述べたという。
 農水相がどのようなデータを根拠に野鳥の全体数が上回ったと言っているのか、どういう種類の野鳥がどのように増減したのかまで把握した上で発言しているのか手元に資料がないので何とも言えないが、一国の大臣の発言としてここに記録しておき、もし後日、都合のよい解釈をしていることが判明した場合には断固として追求していきたいと思う。
 この種のデータでは、単なる総数の増減ではなく、地域全体の生態系がどう変化したのかということまで把握しなければ、干拓の正当化に結びつけることはできない。野鳥や、諫早湾に特有の魚介類、ハママツナなどの植物の生育できる面積が減少したことは紛れもない事実なのであるから。
 「風水害などの被害を受けずに済んだと感謝状をもらっている」というのお笑いぐさだ。たった1年間、特段の風水害を受けなかったことをどうして、閉め切りのおかげだと言えるのか。閉め切り干拓の防災効果については種々の疑問が投げかけられているし、上にあげたように昨年の大雨の時期にもいろいろな問題が指摘されていたはずだが、どうなったのか。
【新しく知ったこと】
【リンク情報】
【生活記録】
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
  • 旧ソ連軍、朝鮮戦争に延べ約4万人の兵士を参戦。ロシア国防省戦史研究所による。[4/14 朝日]
  • 臓器移植法半年、実施ゼロ。[4/15朝日]